青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
はい、それ俺ですよね。
初対面でありながら清々しく蹴り飛ばそうとしてくれましたよね、モトさん。
言葉さえあの当時、交わしていなかったっていうのに、おんどりゃあ気に食わないんじゃあああ! で蹴ろうと…、はぁ、とつてもとつても美しい思い出だよ。
まあ…、あの時は畜生って思ったけど、こうやって話を聞いてみると俺、モトの居場所を脅かしたのかな。
なんか不条理な罪悪感を感じるぞ。
まったくもって不本意だけどさ。
寧ろ、俺は舎兄(コイツ)のせいで気苦労バッカ背負ってたんだけどさ。
辛辣な台詞に苦々しく笑った刹那、「けど今は」の声で向こう側の椅子が勢いよく音を立てながら引かれ、斜め前から容赦なく胸倉を掴まれた。
「おぉお?!」イキナリなんだよ、キョドる俺は軽く両手を挙げて早々降参ポーズを取るんだけど、意味ナーシ。
「ちょ」驚くキヨタと、「お、おい」戸惑うヨウの声を無視し、構わずモトは青筋を立てて、
「アンタが誰かに馬鹿にされる方がムカつくんだよ!」
大喝破。
目を点にする俺をがっくんがっくん揺すって、何で見返そうとしないんだと怒られた怒鳴られた罵られた。
「1学年でも噂立ってるんだぞっ、アンタの陰湿な噂!
聞く度にいっらぁ~っとしなきゃなんねぇしっ、アンタはアンタでっ、なんだこの服装! 折角着崩してやったっつーのに、また真面目に戻しやがって! オレに喧嘩売ってるのか、なあ?!
っ…オレは言ったよなっ、今度違和感ありありの真面目ちゃんにしたら右耳にピアスあけるって! 学外じゃ着崩すとも言ってたくせにっ、結局元に戻っちまってるじゃんかよー!」
「い、言われ…たような…、言ったよー…なー…」
「あ゛?」
「ご…、ごめんなさい…。言われましたし…、言いましたです」
ちょ、止まってくれモト。
声が大きいからっ。此処は通路の一角っ。
ああそこの女子大生さん達っ、なんでもないのでっ、変な目で俺等を見ないで下さい。喧嘩じゃないんですよ、これ。
あ、いえ、変な目で見えてもいいんですけど、見るならモトだけにして下さい。
俺は被害者ですんで! モトはモトで止まらないし。