青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
ポリポリ頬を掻いていると、「アンタにさ」三拍呼吸を置いて、モトが視線の焦点を俺に定めた。そっと声を窄めてくる。
「昔、裏切り者発言したこと、憶えてるか? オレが感情に任せて言った、あれ」
裏切り者発言…、なんてされたっけ?
ちょいと首を傾げて思い当たる節を脳内検索。
真っ先に引き出した記憶は、俺が日賀野の舎弟にされた時の日のこと。
あんま自分でも思い出したくない苦い記憶だけど、モトが勢いに任せて言うとしたらこの事件だろう
実質裏切りそうになったわけだし…、利二が止めてくれなかったらどうなっていたことやら。
あの時は俺、利二や自分のことで手一杯だったから、モトがそんなことを言ったのか全然記憶にないんだけど。
「俺が裏切り未遂を犯したあれか?」
問いに、
「未遂でもなんでもないだろ」
あれはただの恐喝事件だった、裏切り未遂も何もない、モトが綺麗に訂正してくる。
面食らう俺に、モトがボソボソッと低く小声で、だけどハッキリ告げた。
「噂じゃ狡いとか卑怯者だとか言われてるけど、アンタ、ちっとも違うよな。体張ってヤマトさんの舎弟、一蹴した男だしさ。
あん時、安易にアンタに罵ったオレをぶっ飛ばしたいくらい、アンタ、真っ直ぐだよ。
悔しいけど、カッコつけてばっかの行動で、オレ、見返されちまったし」
「モト…、急にどうしたんだよ」
困惑交じりの笑みを浮かべれば、垢抜けた笑みを浮かべてモトが目尻を下げる。
「馬鹿げた発言をしたオレを見返したみたいに、今度は周囲を見返して欲しい。そんだけの話。ヨウさんもそうだけど、アンタやキヨタ、皆をひっくるめてオレの居場所だし」
―…なあケイ、オレと約束しろよ。
有ること無いことの噂を鵜呑みにしてる奴等を見返すって。ワルで見返すって。
それができなくても、せめて何かあったらオレ等に頼るって。アンタって何かあればいつもヨウさんばっかだ。
けど、他の奴等だって頼れると思うぜ?
どっかの誰かさんは、その現状に寂しいって陰で嘆いてるんだし。