青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


なにぶん、あそこは自分達のテリトリー。

此方があの商店街の構造や内部を把握していることは十も百も承知している筈。

付近で奇襲を掛けることはあっても、あくまで決着を付けるのは“廃墟の住処”ではないだろう。
 

もしかしたら奇襲を繰り返すことで此方の戦力を削り、一気に畳み掛けるのかもしれない。

桔平さん個人の意見に、涼さんは賛同した。

「楠本の悪知恵は榊原から受け継いでいるしな」

戦術としては有り得ると苦々しく頷いている。
 

ちなみに楠本チームの出現場所は特定できていないらしい。
 

ハジメの案で地図上に出現場所を記してみたけど、見事にばらばら。
神出鬼没という四字熟語がお似合いな出現の仕方だ。

ただ地図を見て気になった事がある。

俺は皆が集会をしている余所で、地図上を指でなぞった。
 
 

(此処は三丁目古書店近くの空き地。こっちは五番地の公園…裏辺り。向こうは隣町の高架線下…、か。裏道が近くにあるよな、此処)
 
 

まさか、とは思うけど…、まさか、な。
 
ジッと地図と睨めっこしていると、「ケイ」蓮さんが声を掛けてきた。

顔を上げる前に、「何かあるのか」地図を覗き込み、硬い声で質問を飛ばしてくる。


俺は間を置いて、ちょっと気になる事があってと答えを返す。


すかさず教えて欲しいと蓮さん。
どうやら浅倉さんのことで、事の把握に焦っているらしい。


気持ちは分かるけど、あくまで可能性だ。

安易にこれを鵜呑みされても困る。

なにより、情報が足りない。楠本の情報が欲しいところだ。
  
 

「蓮さん、楠本ってフリー時代、いつも何処にいました?」



彼の質問に答えず、質問を飛ばす俺。

気にすることなく蓮さんは口答。

「街を転々としていたらしいぜ」

特定の場所にはいなかった、野良不良だったからな、と教えてくれる。
< 191 / 804 >

この作品をシェア

pagetop