青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「つまりこういうことだぜ、ヨウ」
ケイの土地勘を持っての戦術は文字通り、地を攻める戦術。
どの道で行けば最短ルートか、どの道を塞げば相手が不利になるか、各々道を使って戦術を立てるもの。
一方楠本の土地勘は、地を使う戦術。
どの土地を使えば、喧嘩に勝てるか、相手を追い込めるか計算して戦術を立てるものってわけだ。
奇襲を掛ける際、より身を隠せそうな、相手が油断しそうな場所を選んで攻めるってわけだな。
ということは、だ。
これまでケイの土地勘を頼っていた俺サマ等だが、奇襲バッカ仕掛けてくる楠本相手じゃあ、この戦法は使えねぇよな。
だって相手が何処にいるか分からないわけだし、地を攻める戦術ってのは相手の居場所がある程度分かってから使うものだから。
荒川チームお得意の地を攻める戦術は今回無効ってわけだ。
まったく使えないってわけじゃないとは思うが、今までみてぇにあれや抜け道を使おうだの、これや裏道を塞ぐだのは無理ってことだ。OK?
「おいマジかよ」
引き攣り顔を作るヨウに、申し訳ないけど追い討ちを掛ける。
「それになヨウ。楠本と俺とじゃ土地勘に差があるんだ」
俺の土地勘が優れている理由はチャリで地元を駆け巡っていたから。そうだな、最短ルートを見つけ出すカーナビのようなもんだ。
反面、楠本はその足で街を彷徨っていた。
必然と道を頭にインプットしていっただろうし、それこそチャリでは行けないような場所まで、知り尽くしてるんじゃないかと思う。
道なき道まで知り尽くしてるって言えばいいのかな。
さっき襲われた組が瞬く間に姿を晦ましちまったって言ってたけど、それはきっと楠本の土地勘がいかんなく発揮されたが故のもの。
民家と民家の間に隔たっている塀を使って逃げちまったかもしれないし、どっかの建物に逃げ込んで身を潜めちまったのかもしれないし。
ヨウ、俺の土地勘はあくまで“道”がメインだ。楠本の土地勘とは種類が違うし、今回ばっかりはあんまり使えそうに無い。