青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「参ったのは楠本の土地勘は俺の知らない抜け道まで知ってそうだってこと。完全に奇襲向けだよ、こいつ。伊達に野良不良をしてないっつーかさ。
ぶっちゃけこいつは俺よりも土地勘が優れている」
「ふぁ~…、これは参ったな…、ヨウ」
欠伸を噛み締めるシズはかったるそうに頬を掻いてリーダーに流し目。
「楠本は真正面から喧嘩をする気なんかなかけんね」
九州弁になる涼さんも、さてこれからどうしようとヨウに視線を投げた。
お手上げだとばかりにビリヤード台に腰掛けるヨウは、
「俺は直球型だからな」
こういったひん曲がった戦法の対処は思いつかんと投げやりに吐露。
そこで頭脳派達に意見を求めるわけだ。
それまでダンマリ聞いていた響子さんは喫煙をしつつ地図を眺めて、ゆっくり紫煙を吐く。
「目には目を、歯には歯を、だなこりゃ。その手しかねぇと思うぜ」
というと?
野郎共の視線を一身に浴びながら、彼女はフロンズレッドの髪を弄くり、平坦に答えた。
目には目を歯に歯を、だったら奇襲には奇襲を、だと肩を竦める。
謂わば“五十嵐戦法”でいこうじゃないかと彼女は言うのだ。
奴が以前、俺達に『漁夫の利』返し戦法を取ったように、こっちも奇襲返しを取るしかない。
簡単にいえば、楠本にヤられる前に俺達がヤっちまおうぜ作戦。
ははっ、単純明確且つ物騒な戦法だな、おい。
だけどその戦法は相手が何処にいるか、分かった上での戦法じゃ…、俺の疑問に響子さんは「オトリを使う」これまた大胆なことを言い出した。
「奇襲を掛けてきそうな場所に仲間を送り込む。んで、奇襲を掛けられそうになった仲間を助ける奇襲返し組が出てきて、返り討ち。これしかなくねぇか?」
「…確かに…、だが響子…、奇襲を掛けてきそうな場所なんてそうは…分からない…、不良の足取り…も掴めていないぞ?」
眠たそうにシズが意見した。
お前、なあんでこんな事態になっても眠気を噛み締められるんだよ。
俺なんて、今からでも喧嘩がおっ始まるんじゃないかって胃が悲鳴を上げてるっていうのに。