青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



 

「―――…へえ、楠本って奴がケイさん以上の土地勘を。
だけどそれ、マジなんっすか? 俺っち、一欠けらも信じられないんっすけど」
 
 
事情を聞いたキヨタは、早速俺達の話し合いに加担。
広げた地図に目を落としながら美化発言をしてくれていた。 

「種類が違うんだよ」

俺はキヨタに区分を説明。
主に道を利用するカーナビ田山とは対照的に、楠本は都会のターザン。

地図上に載らない道なき道まで知り尽くしている厄介者。


「楠本は同じ土地勘を持つ奴から見ても、羨ましいくらいの独自地元ナビを持っている。だからこそ今まで土地を利用してきた荒川チームお得意戦法が使えなかったりするわけなんだけどさ」

「ケイさん以上なんて生意気っスね」

「ははっ。俺の場合は単純にチャリで地元を走り回っていただけだからな。俺の土地勘は誰でもすぐに身に付けられる能力だ」
  

俺は広げている地図に目を落とし、脳をフル回転。 
 
奇襲が掛けられそうな場所と自分の記憶を思い出せる限りの思い出して、条件を照らし合わせる作業に移った。

俺と話し合っている不良網に長けているタコ沢に、最近の不良事情を聞きつつ地図に奇襲を掛けられそうな場所を記していく。

地図を挟んで向こう側で胡坐を掻いているタコ沢は、太腿に肘を置き、そのまま頬杖をついて仏頂面に紙切れを眺めた。


「フリー時代の楠本の根城は路地裏が主だったらしいぜ。
てことは、探るとしたら路地裏がいいんじゃねえと俺は思うぜゴラァ。奴は路地裏を知り尽くしてるらしいからな」

「路地裏が多い場所っていえば、駅前広場周辺だけど…、此処は人通りが多いぞ。タコざッ、アウチ!」


ガッツンっと脳天に拳を入れられた。  

「イッデー!」何するんだとむくれる俺、

「ッアー!」ケイさんに何するんだよ、吠えるキヨタ。


当の本人は誰がタコだと青筋を立ててくる。
 

ったくもう、大事な話し合いの最中なんだから、名前くらいスルーしとけって。

ちぇっ、気の短い奴。分かったよ、今だけ谷沢で頑張るよ。


今・だ・け・は!


心中で毒づきつつ、俺は話し合いを再開した。

改めて駅前広場周辺は可能性的に低いんじゃないかとタコ沢に質問。
人目が多いと喧嘩もし難いじゃないか。
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