青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
◇ ◇ ◇
「悪かったな、荒川。今回もおめぇ等のおかげで助かっちまった」
数日後。
交差点四つ角、某ビル二階ビリヤード場の近くにある駐車場で煙草をふかしていたヨウは、前触れもない向こうチームの謝礼に肩を竦める。
「テメェ等主催の喧嘩は」
いっつも後味が悪い、棘のない毒づきを返して紫煙を吐き出す。
“エリア戦争”よりもタチが悪かったな、ヨウの率直な感想に浅倉は相槌を打った。
金網フェンスに寄りかかり、浅倉は本当にタチと味が悪い、苦笑を漏らす。
「“エリア戦争”よりかは傷付く人間が少なかったが、あの喧嘩以上に深く傷付いた人間がいるのも確か。こっそりチームを去った奴等もいる。
ま、奴等は楠本側の人間だったんだろうけどな」
「チーム内の秩序は?」
「大丈夫だ。チーム内で裏切りがあったことには動揺していたみてぇだけど、それ以上のことはねぇ。
作戦の真相を知っているのも極一部、真相は話さない方がチームのためだろうな」
「だろうな。……、あいつは大丈夫なのか?」
あいつと指す人物に、浅倉は力なく笑って肩を竦めた。
前回同様今回の喧嘩で責を感じているあいつは、取りあえず気が落ち着いたというところだろう。
大丈夫かと聞かれたら、大丈夫じゃないと返答するのが筋。
つまりまだ落ち込んでいるのだ。
「目の前で」楠本が落ちちまったことがショックだったみてぇだ、浅倉は息をつきヨウに向かって片手を出す。
何も言わず、ヨウはブレザーのポケットから煙草の箱を取り出し、百円ライターと共に手の平に置いた。
「今回は楠本に勝ったが、あいつの仲間を全部片付けたわけじゃない。楠本が復活したら、お前等、また同じことを繰り返すぞ。手を打っておかなくていいのか?」
「手を打つにしてもなんにしても、楠本が入院している以上は向こうもおとなしくしているだろうし。簡単に完治する怪我でもねぇし。今しばらくは放っといても大丈夫だろ。多分」
「テメェな、適当じゃねえか」
「しゃーねぇだろ。おりゃあ、頭使うタイプじゃねえんだ。なんかあったらまた、イケメンくんが手ぇ貸してくれるって信じてらぁ」