青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―





「―――…蓮さんって絶対にワンパターン人間ですよね。やっぱり此処にいたんですか」
 
 
俺の声掛けに、ぼんやりと石造りの手摺に寄りかかって橋から景色を眺めていた蓮さんが反応。

川面から目を放してこっちに視線を投げてきた。

「ケイ」力なく笑う蓮さんに、「ワンパターンで助かりました」おかげで探す手間が省けたんですから、おどけながら肩を並べる。


そんなにワンパターン人間かなぁっとぼやく蓮さんだけど、蓮さんって何かしらあると橋でぼんやり景色を見る人なんだよなぁ。

蓮さんって無自覚か?
 

なんで俺が探していたのか、敢えて理由を聞いてこない蓮さんは意味深に溜息をつく。


「俺がいるのに溜息なんて」


いけずなお人デスネ、真似して溜息をついて見せると蓮さんが一笑を零した。

俺も笑みを返して蓮さんの手に視線を落とす。

そこには包帯で巻かれた痛々しい両手、完治までは程遠そうだ。


俺はどうしてこの手が傷付いているのか知っているけれど、それを言ったところで蓮さんの傷口を広げるだけ。

 
何も触れず、「蓮さん。毎日此処にいるんじゃないですか?」と疑念をぶつけることにした。

ビンゴだと蓮さんは返答。気付けばいつも此処で景色を眺めているのだと教えてくれた。此処の景色を眺めているときが落ち着く、蓮さんはそう語った。
 

「楠本のいる病室に足を運ぼうかどうか、いっつも此処で悩んでいるんだ。
まだ目は覚ましていないらしいけど、いや、見舞いとかそういう気持ちはないんだけど、なんか、顔くらいは一応拝みたくて。けどできないんだよな。ヘタレてるぜ、俺」


「俺ならその気持ちさえ抱けないですけどね。蓮さんは強いですよ」


「いや、俺は強くはないよ。楠本に喧嘩じゃない、喧嘩で負けて、最後は奴の思い通りになっちまって。
あの時、意地でも手を放さなかったら…、悔やんで仕方が無い。

だからってあいつの病室に乗り込んで、トドメを刺す行為も出来ない。刺しておけば、繰り返さないだろうに」


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