青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


◇ ◇ ◇


―――…ジミニャーノ歴17年(まだジミニャーノだって言い張るよ!)。

俺、田山圭太はこう見えても、それこそ地味で取り得がなさそうに見えても、二つほど特技を持つ。

 
一つ目は言わずと知れた自転車。

ヨウの舎弟になるまであんまり自覚はしていなかったんだけど、今では俺の強みそのものになっている。

チャリを乗り回すことによって肥えた土地勘も今では俺のなくてはならない武器だ。


二つ目は自己紹介等々でよく口にする習字。

これは母さんから習わされていただけの、不本意ながらの俺の特技。

低学年から中二までみっちり習わされていたおかげさまで、毛筆硬筆共に級は上だった。

結果を出さないと母さんが怒る(そして小遣い半減)ってのが努力の主な理由。

加えて、俺自身の大人しい性格にも合っていたんじゃないかと思う。
今思えば、苦だと思いながらも字を書くことは嫌いじゃなかったし。


おかげさまで習字教室では習っている中でもわりかし上位にいた。

…まあ、単に人数が少なかったからってのもあるんだけどさ。
 

本気でやり込めば書道師範になれるんじゃないかって、過大評価されたんだけど、残念な事に俺の進路問題で敢えなく道は閉ざされたという。

やる気の問題もあったし、俺自身乗り気じゃなかったっていうのもある。

中学に入った途端、級の上がる速度も遅くなったしな。

 

で、だ。



俺は習字を嫌々習わされていたわけなんだけど、そこにいたとある同級生。
 
中時代の同級生でもある馬場 波子(ばば なみこ)って女の子がすこぶる苦手だった。


別名毒舌の波子と俺が心中で勝手に命名している女の子が、苦手も超苦手。


弟の浩介や地味友の健太と一緒に苦手だと陰で囁いていた女の子で、できれば関わりたくない…、一言で言えば強気で勝気な女の子だった。


強気・勝気だけならまだ良かったかもしれない。うん、強気の勝気だけなら。

俺自身も関わらなければ良いだけだし、話し掛けられたら適当に流せば良いだけの話だから。


だけど、こいつは自ずから俺に関わる、いや食って掛かる厄介者だった。


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