青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
俺の呼び掛けによって我に返ったシズは、「いるか?」食べるならやる、と皿を差し出してきた。
「もう腹がいっぱいだしな。食べきれない」
付け足してくるシズだけど、俺は勿論、チーム内は物の見事に時が止まった。
え、お前、なんて言った?
ミルフィーユいるか、お腹いっぱい、食べきれない…、嘘だろ。絶対嘘だろ。
あの大食らいの食いしん坊シズが俺に食い物を分け与えるどころか、満腹を口走った、だと?
だってまだ、それ一皿目だぞ。
俺は夕飯があるからケーキだけに止めておいているけど、普段のシズなら此処で間食がてらにうどんやピザを頼んだり、デザートを何皿かぺろっと平らげる筈だろ。
なんでお前、もうごちそうさましてるんだ?
しかもタダで俺に食い物を与えるなんて…、シズって自分の食べ物を相手にあげる時は物々交換が基本だっていうのに!
「シズちゃん、具合でも悪い? 病院行く?」
ニヤ顔から一変、真顔で失礼な事を口にするワタルさんに怒りもせず、シズはフォークを銜えて「美味くないんだ」とミルフィーユの感想を述べた。
どれどれ。
ワタルさんがシズの口からフォークを引っこ抜いて、ミルフィーユをお味見。
咀嚼するワタルさんは眉根を寄せて、「不味くはナーイジェリア」普通のお味じゃないかと率直な感想を告げた。
同じテーブル内でフォークを持っている俺とココロも一口ずつ頂く。
うん、シズが言うほど美味しくない味でもないよ。
普通にファミレスで出そうなミルフィーユの味。悪くはないと思うんだけど。
「じゃあシズさん。こっちのチーズケーキはどうでしょう? 一口、食べたら気分が変わるかもしれませんよ?」
ココロの誘いに、シズは瞬きしてワタルさんからフォークを返してもらうとチーズケーキを口に入れて咀嚼。
眉を八の字に下げるシズは「美味しくない」と同じ感想を述べていた。
「甘い物に飽きてるんっスよ! 俺っちのフライドポテト、分けてあげるッス!」
隣のテーブルから回ってきたキヨタのフライドポテトを口に入れ、シズは暫し咀嚼。
「不味い」申し訳無さそうに、だけど正直に答えるシズの返答に俺達は目を点。
口を揃えて具合が悪いのかと聞けば、そんなことはないと即答される。
「ただ、何を食べても美味しいと思えないんだ。最近、何を食べても不味く感じる」