青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
自分でもおかしいとは思っているんだ。
よく食べていたポテチもポッキーも、コンビニでプレミアが付く一個150円のロールケーキも、200円くらいするチョコレートケーキも、なにもかも美味しくないと思う自分がいる。
味がしなくなったというか、なんというか、前のように味に感動できなくなっているんだ。
空腹も、食べたいという欲求も出てこない。ここ暫く美味しさをまるで感じない。だからって体調が悪いわけでもないし。
「食べることに飽きた…、のかもしれないな。嫌い…になったわけじゃないし」
シズは自分自身の事なのに、意味が分からないといった表情で首を右に左に傾げていた。
「そういえば」
シズと同校でクラスメートのココロは、最近休み時間に物を食べるシズの姿を見ていないと零す。
昼食の間は専ら寝ていますよね、ココロの問い掛けに生返事するシズはこんな経験初めてだと苦笑い。
だけどシズ自身は単に食べることに飽きているだけ、すぐに戻ると俺達に告げていた。
……シズがそう言うなら、何も言わないけどさ。
「あ、分かった。シズちゃーん、食欲じゃなくて色欲がムラムラと出てきてるんじゃなーいっぽ!
だって思春期の男の子だものっ。きっと食欲はエッチイ気持ちに転換されッ、アイッダー! 今、本気で殴ったっしょこたん!」
シズから痛い拳骨を貰っているワタルさんが、「ヒドイぴょん!」これでも心配しているのに、とわざとらしく嘘泣き。
それがまたシズの神経を逆立てたのか、肘鉄砲を食らわせていた。
うん、自業自得ですよワタルさん。
隣のテーブルでシモの話が大嫌いな響子さんが青筋を立てていますから、悪ふざけもほどほどに。
「………」
俺はふとダンマリとシズを観察しているヨウに気付いて、一瞬き。
意味深に目を細めて、唐揚げを口に運んでいるヨウは何か思う点があったのかもしれない。シズの返答にこれっぽっちも納得していない様子だった。
声を掛けたかったけど雰囲気がそうさせてくれなかったから、俺は気付かない振りをすることにした。
ヨウが何を思っているのか知らないけど…、シズが大丈夫な口振りで語っているんだから大丈夫…、だよな。きっと。