青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
それからの一週間。
心配していたシズに大きな変化は見られなかった。
日常の変化で挙げられるとしたら、二日に一回、堤さんが俺の下にやって来て出展の一件を頼んでくることくらいだけど、今はシズのことを重点に置きたいから俺のことは省略させてもらう。
食に関して急激に興味をなくしたシズは暴露を契機としたのか、食の代わりによく俺達と喋るようになった。
普段のシズは食べるか寝るかが大半。
ゲーセンやカラオケ等々遊ぶ行為以外の時は、食べて寝るを繰り返す子なんだ。会話に入っても聞き手が主、喋る行為自体には消極的だ(あ、食べ物の話になると饒舌も饒舌なんだぜ!)
だから自ずから俺達と喋るってすっごく珍しいんだけど、此処一週間シズは俺達の談笑の輪に対して積極的だったりする。
悪いってわけじゃないし、こっちも話していて楽しいんだけど、なーんかシズらしくないんだよな。
食べる行為を見なくなったこともなんだか変な感じだし、昼寝する姿もあまり見かけなくなった。
俺が違和感を覚えているんだから、きっと他のメンバーも同じ事を思っている筈。
でも誰も何も言わない。
それはシズが楽しそうに見えるせいだからだろう。
喋る時のシズ、すっごく幸せそうなんだ。
まるで極上のケーキを口にしたくらいに頬の筋肉を緩めているから、その、変な感じとか、らしくないとか、そんな余計な事も言えず。
違和感の度だけが日に日に増していった、ある日のこと。
糸が切れてしまったかのように、プッツリとシズがたむろ場に来なくなった。
学校にも行っていないようで、シズと同校の響子さんやココロも姿を見ていないと教えてくれる。
携帯にメールや電話を掛けても応答なし。
シズの家を知っているヨウが何度訪問しても、居留守を使われているのか、本当に本人がいないのか、シズの姿は見られなかったという。
煙のように消えちまったシズに、誰よりも心配の念を見せていたヨウは「やっぱ…、あいつ」何処となく後悔したような顔を作っていた。
シズが消えたことに対して、なんとなく心当たりがあるらしい。
だけど確信はないのか、俺達には胸の内を明かしてくれなかった。
連絡が取れない以上、コドモの俺達には成す術もないし、単にたむろ場に行きたくないのかもしれない。
とはいえ心配も尽きない。
どうすればいいか分からず、時間だけが流れ、とうとうシズが現れなくなって五日目を迎えてしまった。