青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
#03. あったかい家を、いつか
―――…アパートで見た夜道の道路での光景。
それはとても露骨で傲慢、けれどなんとなく納得いく光景でもあった。
そう、自分の母の愛人が誰か別の女と歩き、親密になっているという納得した光景。
誰もいないと高を括っていたのか、愛人は夜の道端でやけに化粧の厚い顔の整った若い女と口付けを交わしていた。
人様のキス光景を見ることには何も思う事がない、けれど母の愛人となるとえげつないものを見たような気分になる。
何故だろう?
シズは先を歩く愛人とその女の背を遠巻きにつけながら思った。
愛人の母に対する気持ちなんて、所詮こんなものだった、と。
母は愛人に首っ丈だ。
故に不良になってしまった手の掛かる息子に対する気持ちは、とてもさめざめしている。
何事に対してもハイハイと言うことを聞く息子ならば、また傾向が違ったかもしれないが、生憎自分もできた人間ではない。
結局、簡単に手放せる母の息子に対する気持ちが軽いものならば、愛人もこんなものだ。
嘲笑したくなる気持ちを抑えつつ、シズは今、母にあの光景を見せたらどうなるんだろうと疑念を抱いた。
壊れてしまうだろうか、母と愛人の関係。
それともそう仕向けた自分と母と愛人の関係が壊れるだろうか。
はたまた、今自分が愛人の下に走り、若い女の前ですべてを曝け出したら…、嗚呼、一度で良いから関係が決壊してしまう光景を目にしたい。
だって自分はこんなにも苦労しているのだから。
そんな薄汚れた気持ちを抱いてしまう自分は、薄汚い人間なのだろうか?
そして愛人へのクエッション。
母への興味が薄れているなら、何故自分を母の手元から追い出すような真似をしたのだろうか。
若い女に興味がある一方で、実は母のこともアイシテイルのだろうか?
真相は闇のまま、理解することも不可能。