青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
息子の姿に気付いた母親は、まるで逃げるようにスカートを翻して踵返す。
気付かぬ振りをする母親の背を見送るシズは思う。
寂しい背中だ、と。
母は愛人の後をつけていたのだろうか。
愛人の行動を知っていながら、敢えて、知らない振りをしているのだろうか。
愛人の素行を知っていて知らぬ振りをする母。
息子より愛人を取る母。
女一つで自分を育ててくれた母。
男を求める母。
誰かを欲する母。
色んな母の姿を見てきたが、今の母はとても寂しそうだ。
背中が物語っている。
自分のことを試すかの如く息子に対して冷然な態度を取ったが、追い駆けた方が良いのだろうか。
思えばいつもそうだった。
何が遭っても、それこそ諍いを起こしてしまっても最後は母の傍にいた。
母は望んでいるのかもしれない、追い駆けてくれるのを。
追い駆けなければ本当の意味で母は独りになってしまいそうだ。
散々な目に遭っているというのに、何故かしら母を気掛かりに思ってしまう自分には嫌気が差す。
嗚呼、辛くはない、ないけれど、疲労が増した気がした。
「シズ」
背後から聞こえてきたリーダーの声に、シズは体を微動させて反応。
リーダーは自分が何を見ていたのか理解していたようだ。泣き笑いを零すシズは瞼を閉じ、睫毛を震わせ、
「帰る…」
言葉を紡いだ。