青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
それだけで伝わったんだろう。
「早く来いよ」ヨウが手招き、此処でたむろってもしょうがないと微苦笑を零してきた。
瞼を持ち上げたシズは豆粒のような母の背から視線を逸らし、自分の帰るべき場所を選択して舎兄弟の下に向かう。
戻って来たシズにリーダーは頭を小突いて、また逃げられるのかと思ったと一笑。
そして彼は言ってくれるのだ。
「俺達にビビってんじゃねえぞ。俺等は壊れねぇ」
と。
「んじゃ行くか」先を歩き出すヨウと、「俺のチャリ!」一緒に取りに行ってくれと頼む後を追うケイ、暫し佇む自分。
何度も瞬きを繰り返した後、シズは二人の後を追った。
片隅で中学時代の記憶を蘇らせる。
グループが分裂する際、何故自分はヤマトではなく、ヨウについたのか、を。
理由は簡単。
ヤマトよりもヨウの方があったかいグループを作り上げてくれると、自分の望むグループを作り上げてくれると思ったから。
グループに入るきっかけを持ったのもヨウが声を掛けてきたことだった。
毎日のように教室の隅でパンやおにぎりを齧っては昼寝を繰り返している無愛想な自分に興味を示したクラスメート、それが荒川庸一。
『なあ。テメェっていつも食っちゃ寝てるけど、他にすることねぇのか?』
大欠伸をしてうんうんっと寝惚けた生返事を繰り返す自分に笑って、『オモレェ奴』ヨウは毎日のように声を掛けてきた。
時にパンの差し入れを持って、積極的に話し掛けてくるヨウの明るさに、愉快さに、居心地さに、次第次第に惹かれ自分は彼とつるむようになった。
『今日も食ってるのか、シズ? 一つくらい分けてくれって』
『駄目だ。お前が持っているポッキーは新発売なんだ。1箱200円以上するお高めのポッキー。だから食べるな、そこに置け。そっと置け。今すぐ置け』
『うっわ、テメェ。食い物になると饒舌っ。はは、頂き』
『ッ、ヨウ―――ッ!』
なったのだ。