青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
あんまりいじめてると仕返し…、はできないから、俺が潰れちまうと大主張。
やっと退いてくれたシズは俺の頭を小突いて、「一本…取った」とはにかんでくる。
なあにが一本取った、だ。
不意打ちだったじゃんかよ。
上体を起こして胡坐を掻く俺はまた仕掛けてきやがって、と相手をジロリ。
何処吹く風で綻ぶシズは、「ケイは」隙があり過ぎる。
仕掛けることが面白いと、悪戯気に目尻を下げた。
「ケイ…、からかいがあるな」
「シズってそんなにもいじめっ子だったか? 俺いじめなんてしても、俺が楽しくない!」
お前はいつからジャイアン日賀野になったよ、泣くぞ俺。
むくれて不機嫌になる俺に構う事無く、シズは笑うばかり。
ほんっとお前、此処最近は悪戯っ子もいいところだよ。
なにかとプロレス技もどきを仕掛けてきやがる。
ったく、浩介みたいなことしやがって、でっかい弟でもできた気分だぞ。じゃれ合いたいのか?
……だろうな、絶対。
シズらしくねぇ不意打ちバッカ仕掛けてくるけど、なんだか全部子供染みてるし。
もしかしたらこっちが本来のシズの姿なのかもしれない。
やや悪戯っ子で何かとヤンチャする姿が本当のシズなのかもしれない。
普段は物静かで食っちゃ寝ばっかりなのにな。
今も変わらずその一面はあるんだけど、それにプラスされたかのように子供の面が見え隠れしている。
おかげさんでこっちは戸惑いやら苦笑いやら体が痛いやら、だ。
ま、いいんだけどさ。それもまたシズなんだって受け入れられるし。
楠本のような瞳をするくらいなら、今のシズの方が断然マシ。
俺への悪戯に満足したのか、シズは敷布団に寝そべって俺の読んでいた漫画を手に取るとパラパラ捲り始める。
「ケイ…」と、シズが悪いなと謝罪してきた。
漫画を眺めながら詫びてくるその台詞、それは今の行為じゃなくて世話になっていることだって分かっていたから、「いいって」好きでしてるんだから、と返答。
もう何べん聞いたか分からない詫びに肩を竦めて、俺はシズの隣に仰向けで寝転んだ。
「そろそろ耳にタコができそうだぞ、シズ。あんま謝るなって。あ、一人暮らしになったら、一番に俺を泊めてくれよ」
シズは綻んで漫画を閉じた。
頬杖をつくシズは、腹這いのまま足を宙で軽くバタバタ。
その足先を見つめていると、「布団は…いいな」シズがポツリと零す。
「自分…、よく押入れで寝ていたから…、布団は快適だ」
「押入れといえば、なあシズ。お前の出てきた襖のことなんだけどさ、レール部分に釘が打ってあったのはなんでだ? おかげで開かなかったんだけど」
「あれか? あれは…、自分がやったんだ」