青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


犯人はお前か。


ツッコむ俺を余所にシズは教えてくれる。親と口論になった時、もしくは身内のことで不味いことになった時は必ずそこに避難していた、と。

外側から開かないように細工し、押入れに逃げ込んだ後、内側からも開かないよう足で襖を固定して寝ていた。


小学生高学年の頃からやっていた行為らしく、最初こそお母さんが何度か釘を抜いたらしいんだけど、シズはめげずに釘を打ち直したとか。


そこがシズにとって家の中で安心できる唯一の居場所だったらしい。

押入れで眠りこけちまうことも多々だったらしく、中学の頃は度々愛人と母親の濡れ場を耳にしてしまったとか。

なんとも味の悪い話だ。

 
「遭遇した日はいつも…眠れなかった…」


シズは微苦笑交じりに語る。

 
「出るに出られなく…なってな。終わるまで…、そこで過ごすんだが…、居心地が悪くてな。ウォークマン…を、次から持ち込むようにしていた。
そして…、その内…自分も家にあまり…、帰らなくなった」


だけど寝る場所に困って、野宿することも多かったとシズは目を伏せる。

黙って聴いていた俺はただ相槌を打つことしか出来ない。変に同情するとシズもヤだろうから。
 

「二、三度…、身を売ったこともある…。どうしても…、寒い冬で…、雪が降っていたから。野宿じゃ…凍え死ぬと思ったから。
あんまり性に…合わなくてな…、すぐやめてしまったが」


……シズ、そんなこともしたことあるのか。

知らなかった、わりと長く一緒にいるのに。


「それに…、ヨウにも止められたんだ。後腐れ…ない関係だとしても…、自分が望んでいないなら…やめておけ、と」

 
あいつにはいつも止められてしまう、シズは懐かしむような眼差しを作った。

「今回は…」

ケイにも止められてしまったな、懐古を宿す眼差しを俺に向けてきた。

俺は首を横に振る。
今回もシズを全力で止めたのはヨウだよ。俺はくっ付いていただけだ。何もしちゃない。


あいつがシズを止めたんだ。

ヨウはいつだって仲間のために突っ走る情に熱い男だよ。
 

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