青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「なるべく時間を稼ぎしましょう」


仲間達に連絡を入れたのだ、遅かれ早かれきっと仲間が助けに来てくれる。

それに此処で手間取らせておけば、必然と自分達を追い駆け回している人間が集中するに違いない。


助けを呼んだものの、よく状況把握していない仲間達に怪我をさせたくはない。


仲間達のためにも、人を分散させておくより、人を一箇所に固めて置いた方が無難なのではないかとココロは二人に同調を求めてきた。


「私は喧嘩の素人なので、よく喧嘩については言えませんけど…、喧嘩する場合、人間が一箇所に集まっていた方がやり易くありませんか? お二人のご意見はどうです?」

「確かにあっちこっち人が分散していると、やり難くはありますっス。誰が何処にいるか、常に神経を尖らせておかないといけないんで、余計神経を使うんっスよ」


「だったら尚更、時間を稼ぎましょう。
この扉、上1/3が曇りガラスです。廊下の状況がはっきり分かるわけじゃありませんが、人の行き交いくらいなら分かりますよ。

ということで、お二方もお手伝いお願いします」


ココロは矢島舎弟組を手招きした。

自分達も?
己を指差す舎弟二人に三人より五人だと告げ、おいでおいでと手招き。

よってキャビネットを中心に、荒川チームがキャビネットに乗り上がってしゃがみ込み、残り二人はキャビネットを押さえるように床に座り込んで対策を打つ。


こうして五人の人間がバリケード役を受け持ったため、外部の衝撃によって内鍵が悲鳴を上げても、そうは打破できなくなった。


「傍から見れば」

間抜けな光景だろうな、川瀬の嘆きにココロは苦笑い。

「すみません」

こんな方法しか思い浮かばなくて、と謝罪する。

「んにゃ」誰よりも名案なんじゃね? 筋も通っていたし、川瀬は素っ気無く返した。


「女なのにやるじゃん」


谷も同調した。

珍しいことに褒めてくる矢島舎弟組。

荒川チームに気を許したのかと思ったのだが、「お前等は使えねぇよな」谷が荒川弟分組を毒づいた。

少しは心を許したのかと思ったのだが、そうでもなかったようだ。


「アンタ達だってゼンゼンじゃんか」


キヨタが舌を出す。また水掛け論となりそうなので、モトがやんわり口論を制した。
 

川瀬や谷の言うとおり、此処まで先を読んで作戦立てるココロはお手柄である。

意外と彼女は先を読むのが上手いのかもしれない。腕っ節がない分、補うように喧嘩の眼が肥えてきたのだろう。

彼女もそれなりに喧嘩に巻き込まれてきたのだ。

彼女の視点の見方、少しは見習わなければ。
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