青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「なあ、ぶっちゃけアンタ達って喧嘩できるのか?」


仲間内の能力は把握しているため、モトはまだ実力を知らない矢島舎弟組に声を掛ける。

キヨタに食って掛かった谷の動きを見ている限り、そんなに手腕があるとは思えないが。

モトの問い掛けに、「さあな」谷が肩を竦めた。

多分ある方じゃないか、と小生意気口を叩く。

前に千草と共に荒川の舎弟とやりあったことがあるが、どっこいどっこいだったとか。


それを聞いた瞬間、荒川チームは揃って重く溜息をつく。


「ケイさんと同等ですか…」

それは困りましたね。
ココロが両端にいる仲間に視線を配り、

「マージかよ」

モトが嘆き、

「てかケイさんより弱いのか」

二人掛かりで兄貴とどっこいどっこいだったなんて、キヨタは鼻を鳴らした。

次いで、よくもそれで手腕があると言えたもんだとキヨタは二人を馬鹿にした。


カッチンくる矢島舎弟組だが、モトが溜息混じりにチームの内情を教えてやる。

荒川の舎弟は男性陣でも一、二を争う非戦闘員だと。

ぶっちゃけ喧嘩ができないのである。その舎弟に手こずっていたようでは、あまり使えるとは思えない。


素直に喧嘩ができないといえばいいのに、モトのぼやきに川瀬はうるせぇと舌を鳴らした。


「確かに手腕はねぇよ、俺も渚も。けどそれを補うための足があるからいいんだよ」


足?

意表を突かれたような顔を作るモトに、「一応俺達は」陸上部だった、だから足だけは速いのだと川瀬は肩を竦める。

これでも部内ではレギュラーに選ばれるほどだった。

彼の物静かな語りに谷は昔のことだけどな、と補足するように舌を鳴らす。

陸上部だったということはもう、退部しているのだろう。


諸事情は知らないが二人の足は“俊足”なのだと視野に入れておくべきだとモトは考えた。


「足。ケイやハジメと似た類か」


モトは顎に指を絡める。

荒川チーム内で喧嘩ができない非戦闘員は大抵、手腕の代わりに己の得意分野で補う。


ケイが自転車と土地勘、ハジメが戦略と司令塔、弥生が情報収集でココロが個々人のサポート。


うん、喧嘩ができないからといって矢島舎弟組を軽視することはできなさそうだ。

自分達にはない足の速さを持っているのだから。


「こう思うと」


オレはナニが得意なんだ、モトは腕を組んでぐーるぐると考え込む。

手腕は中途半端、特別これといった能力もない。

誰よりも兄分を思う気持ちは強いのだが、この状況下では使える能力でもないし。


いや、兄分の思う気持ちにケチをつけているわけではない。

わけではないのだがビバ劣等感である!


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