青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「アァアア! どうしてオレってこうなんだっ…、ヨウさんの弟分でありながら何もかもが半端なヘチマじゃないか!
ヨウさんは容姿も性格もカリスマ性もパーフェクトなのに、オレはヘチマ!
ごめんなさいヨウさんっ、オレは駄目な弟分ですウワァアア!」
ごんっ、ごんっ。
背後の扉に頭をぶつけて嘉藤基樹(16)は自己嫌悪に陥った。
だってしょうがない。
自分には何も誇れるものがない上にヘチマだと気付いてしまっては、落ち込むどころか気分はムンクの叫び。
中途半端なヘチマは所詮腐ってもヘチマなのだと気付いてしまい、モトの心中は嵐嵐大嵐だ。
「もう駄目だ」
オレは終わったんだっ、オイオイシクシク落ち込むモトに周囲は「……」だったりする。
心境はいきなりどうした、である。
「……、妄想癖でもあるのか? こいつ」
川瀬はグズグズと落ち込んでヘチマを連呼しているモトに若干引きながら、モトをよく知っている荒川チームに真意を尋ねる。
「あー…少しあるッスかね?」
キヨタは助けを求めるようにココロに視線を流し、
「どうでしょう?」
視線を受信したココロは誤魔化し笑いでその場を凌ぐ。
フォローできない点からして相手に肯定を示しているようなものだろう。
ドンッ、背後の扉が振動する。
大きな揺れはモトが頭をぶつけているせいではない。
ハッと弾かれたように視線を上げれば、曇りガラスに亀裂が入っていた。
「まさか」
モトは息を呑む。
続け様に扉が振動と衝撃、上1/3を占めている曇りガラスが悲鳴を上げた。
扉が開かないと判断した廊下にいる連中は強行突破に出たようだ。
物でガラスを叩きつけて分厚い曇りガラスを割ろうとしている。
いくら曇りガラスでも、強化ガラスではない。
昭和から建てられているであろう古い建物ゆえ、ガラスに耐久性があるとも思えない。
このままでは数回の大きな衝撃で破られてしまう。