青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
(ガラスが破られたら、オレ達、かーんなりピンチだぞ。
内鍵を掛けているとはいえ、破られたら最後、開けられる可能性も窓から入られる可能性もある)
チッ。
舌を鳴らしモトは最優先にココロをキャビネットから下ろした。
次いで自分達もキャビネットから飛び下りると破られるであろう曇りガラスを睨んで、この状況をどうするかと眉根を寄せる。
ガラスの突破は防ぎようがない。
かといって人数が把握できていないため、安易にやり合えば此方が圧倒的に不利になるのは一目瞭然。
どうする、どうすればいい。
口内の渇きを覚えながらモトはココロに視線を流す。
せめて彼女だけでも避難させたい、が、密室空間になりつつあるこの部屋に避難場などないに等しい。
だったら。
「アンタ達、喧嘩はできないけど女一人くらいは守れるだろ」
ブレザーを脱ぎながらモトは矢島舎弟組に問い掛ける。
訝しげな眼を飛ばす二人に、「部屋の隅に行ってろ」此処は自分とキヨタが受け持つと告げた。
なるべく敵の注意を此方に促すよう努める。
だから隙を見つけ次第、彼女を連れて逃げて欲しい、モトは彼等に提案した。
「はいぃい?!」
これに異議申し立てをしたのはキヨタである。
キヨタは何を言い出すのだと目を丸くした。
ココロを矢島舎弟組に任せる?
そんなのできるわけないではないか。
彼等がココロを守ってくれるなど、何処にも保証がない。
大事な兄分の彼女なのだ。
自分達が守るべきではないかと直談判するが、「無理だ」オレ等だけじゃ守れないし、力不足だとモトは言い切る。
例えキヨタに手腕があり、それなりに合気道を習っていたとしても、守り切れるとは言えない。
寧ろキヨタには率先して敵側を相手取って欲しいのだ。
なんで追い駆けまわされる羽目になったか、濡れ衣を着せられてしまったか、それは判断しかねる。
が、今しなければならないのは勝ちの喧嘩をすることではなく、状況打破と仲間を守り抜くこと。
これは勝敗に拘る喧嘩ではない。尊敬している兄分ならそう状況を判断するだろう。
そう、自分達だけでは無理なのだ。
彼女を守りながら喧嘩するなど。
「今だけでいい。ココロを守ってくれ。成り行きで同じ境遇に立たされちまったんだ。
寄せ集めチームが出来上がったんだと思って、今だけオレ達と手を組んでくれよ。此処を出たら、喧嘩でも相手でも何でもしてやるからさ」