青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


二人は少しでも時間を稼ごうと侵入を必死に食い止めている。

が、向こうからスプレーらしき缶や直接金属バットを投げられてしまい、二人は回避するために一旦後退。

その隙に綺麗にガラスの破片を落とし、数人が侵入した。

バットを拾ったモトが敵を睨みながら矢島舎弟組に投げ渡してくる。
 

受け取った谷は「なんでこんなことになるんだか」気だるく構えを取った。


財布はスられるは、ムカつく奴等とは鉢合わせになるは、挙句守れだの命令されるは。腹立たしいことばかりだと眉間に縦皺を入れる。

「あんちゃんに」

なんて言い訳しようか、谷の問い掛けに川瀬は此処を乗り切ってから考えることにしようと苦笑を零した。

今は外のどこかで待っている兄分を思う余裕はない。

ご尤もだと谷は首肯し、襲ってくる敵方のバッドを受け止めると、脛を蹴って相手を怯ませる。


同時に荒川チームのひとりを連れて出入り口に駆け出した。

既に敵はキャビネットを退かし、内鍵を開錠している。

そのため廊下で待ち構えていた輩は中に侵入し、勘違いで恨みつらみを抱いているであろう荒川チームに襲い掛かっていた。

人数は六、七人といったところ。

到底二人では苦戦を強いられることには違いない。


そのため川瀬が向こうに加担し、谷がココロを連れて廊下を飛び出した。
 

幸いなことに追っ手はいない。

自分とは対照的に足の遅いココロに舌を鳴らし、「しっかり走れ!」一喝して速度を上げる。

腕を引いたまま三階から二階に移動した谷は、階段下を覗き込み、一階に敵がいることを認識する。

ろくにビルの構造も分かっていない自分達を嘲笑うかのように、見張り役兼待ち伏せ役を受け持っている不良達。


下におりるのは危険だろう。
 

谷は作戦変更だと彼女を連れて通路脇に飛び込む。

そこは男子便所、使われていない便所の最奥まで走るとココロに持っていた金属バットを押し付け、そのまま個室の鍵を閉めるよう指示した。

目を丸くするココロを余所に、谷は矢継ぎ早に喋る。

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