青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「そっろそろ武空術を会得するべきか」

俺の嘆きに、

「ケイは超人になりたいのか?」

シズがおどける。

次いでふざけている場合じゃないと頭を叩かれた。


じゃあノるなよ副リーダー!


だけどまあ、ご尤もなんで反論はしない。

ふざけている場合じゃないんだ。


どうにかして振り切らないと。ヨウ達が道案内を待っている。


苦虫を噛み潰したような表情を作る俺とは対照的に一思案するシズは、おもむろに口を開いてこのままヨウ達のところに行こうと提案する。

振り切る時間が惜しい。

だからトラブルを連れてくると先に連絡を取って手を打っておく。


「どうせ…、追っ手はチャリ二台。すぐ潰せる」
 

自分の携帯を取り出すシズは、「最短ルートで向かえ…」連絡その他諸々は任せろと副リーダーが指示を出した。

了解、俺はペダルを踏む足に力を入れる。


お得意の路地裏に逃げ込んだ俺は店裏のエアコン室外機達を避け、湿気た細道を抜けると大通りに飛び出す。

視界の右端にギョッと驚く通行人が映ったけどすんません、急いでいるのでスルーさせて頂きます。


完全に暴走チャリと化している自転車を漕ぐこと約五分。

歩道橋下をくぐり、スーパー近くに交差点を過ぎった先にヨウ達と待ち合わせていた薬局前が見えてくる。


何処からともなく指笛を吹いてくるのは、我がチームの鬼畜と謳われたワタルさん。

薬局前に立っていた彼は俺達が過ぎった後に通りに飛び出し、向こうの急ブレーキを誘う。
 
甲高いブレーキ音と共に追っ手達は一時停止。
 
ニンマリ笑う鬼畜さまは「お邪魔虫はいらねぇんだよ」言うや否や思い切り自転車のタイヤを横に蹴り飛ばした。

自転車は前からの攻撃に耐久性があっても、横からの攻撃には耐久性がない。自転車を喧嘩道具として使っているからよく分かる。

二人乗りしている場合、耐久性ががくんと落ちることも荒川チームは認知済みだ。

なんたって喧嘩にチャリを使うチームなんだぜ!
知っていて当然よ!
 

ワタルさんの容赦ない蹴りによって、前にいたチャリは転倒。

運転手と乗員は通りに放り出された。

背後にいたチャリが一旦引こうと方向転換を試みるものの、一時停止したチャリの方向転換の遅さも荒川チームは認知済み。


ということは?


「速度が落ちたチャリの方向転換って苦労するよなー? とっくに二人乗りの場合は苦労するって俺の舎弟がさ。よく言ってるんだ。なー?」
 
 
待ち構えていたもうひとりの鬼畜改めイケメン不良が、満面の笑みを浮かべて両手指の関節を鳴らした。
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