青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
冷汗を流すチャリ組に、「俺達相手に」チャリで喧嘩を売ろうなんて二十年早い、ヨウは一笑して乗員をまず引き摺り下ろした。
んでもって運転手の首根っこを掴むと、チャリを引き倒して無理やり通りに放る。
チャリはけたたましく転倒したけど、完全に目が据わっているヨウの耳は届かないみたい。
「暇じゃねえんだよ俺達」
それでも遊びてぇってんなら、三分だけ相手する。
とかなんとか言っちゃって不良二人を小道に連れ込んだ。
ワタルさんもニヤニヤしながら小道に連れ込む。
俺はチャリを後退させて恐る恐る小道に入った二人を覗いて見たりするんだけど、悲鳴やら命乞いやら物音やらが聞こえて、つい身の毛をよだたせる。
み、み、見なけりゃ良かった。
二人とも攻撃がえぐい上に無慈悲、容赦ねぇ!
「いいなぁ…」
自分も混ざりたかった…、ぼやくシズもパねぇよ怖ぇよ!
どんだけ不良と仲良くできたとしても、俺は未だにお前等と共感できない部分ってあるぞ! すっげぇあるぞ!
数分も経たず小道から出てきたヨウとワタルさんは揃って弱いと口ずさみ、「だるーい」「時間の無駄」張り合いもなかったと毒づいた。
ナニこの人たち、もっと強い追っ手を連れてきて欲しかったのか? なあ!
圭太、お仲間のお気持ちがちっとも分かんなーい!
お友達だけどゼンッゼン不良達の気持ちが分かんなーい!
物の見事に追っ手を片付けてくれたヨウが、「あ。しまった」輩の目的を聞きそびれたと指を鳴らす。
失神している奴等を起こしてもいいけど、時間は惜しい。
俺は仲間のピンチが優先だと意見して、こっちだとチャリを漕ぎ始める。
薬局前にはヨウやワタルさんの他にタコ沢と響子さん、弥生までいた。
ココロのピンチを聞きつけて飛んできたらしい。
ちなみに彼女の手には物騒なことに金属バットなんか持参していたり(ちょ、怖いんだけど)。
ハジメがいないのは何か別の仕事をヨウが任せたからだろう。姿は見受けられなかった。
バイクで来た仲間達はどっかに駐車しているらしく(多分邪魔になると思ったんだろうな。賢明な判断だ)、駆け足でチャリを追って来た。
「おいシズ」
代われよ、走っているヨウが文句垂れてくる。
そこは舎兄の特権だと膨れ面になるイケメン不良に、「嫌だ…」走りたくないとシズは舌を出す。
「俺だって走りたかねぇし」
ヨウは代われと連呼、シズは総無視して欠伸を噛み締めた。
……どーでもいいけど、漕いでいる俺の身の上にもなってくれよ。
だっれも俺の立ち位置を代わってくれる奴はいないんだな!
優しくねーよ!