青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「ヨウ。ココロから連絡はあったか?」
 

俺は文句垂れているリーダーに話題を吹っかけた。
 
「ああ」簡単にだが状況は把握したとヨウは眉間に皺を寄せる。

スリによって誘い込まれた商社跡に三人が見た凄惨な光景、そして濡れ衣。

そこをテリトリーにしていた不良達が憤り、三人を追い駆け回している。


仕組まれた罠としか言いようがない。ヨウは吐息をつく。


本当にそうだ、巧妙な手口で仕組まれているよ。

三人相手を商社跡ビルに誘い込んだことも、スリした輩も、追い駆け回している不良達も。


「タコ沢。商社をたむろ場にしている不良達の素性は分かるか?」


ヨウの問い掛けに、「だあれがタコだアーホ!」俺は谷沢だと食い下がる某赤髪不良は、忌々しそうに舌を鳴らしながら肯定の返事をした。
 

「あの三人が本当に商社跡ビル地にいるとしたら…、そこら辺一帯は真杉(ますぎ)って奴を筆頭に不良達が群れているって話だ。わりと評判の良い不良だと聞いているが」

「真杉…。ああ、聞いたことある。喧嘩は好まない平和主義者不良だろ?」
 

そうだと相槌を打つタコ沢。

俺的には真杉さんってどなたぞなもし? であーる。

だってしょーがないてんで不良情報には疎いんだもの!

ぶっちゃけ興味ないっ、ゲッホンゲホン!


……不良の舎弟としてあるまじきことを言いそうになったんだぜ。モトに聞かれでもしたら拳骨ものだ!


一方、そこらへんの情報に関しちゃヨウは敏感だ。

「真杉って不良は全然喧嘩しねぇんだよな」

非暴力者なのだとヨウは教えてくれる。喧嘩があるごとに、仲裁に入ってそれを回避していた不良らしい。

一部からじゃ腰抜けって言われているらしいけど、弱いチームだって自覚しているし、喧嘩するために集っているわけでもない。


ただ単に馬鹿騒ぎしたいから集っているらしく、事あるごとに喧嘩を回避して仲間を守る。

それこそ腰抜けというレッテルも貼られても。


な、な、なんて良い人なんだ!
不良のくせに平和主義者っ、素晴らしい!

俺、是非ともその人とお友達になりたいっ!

できることなら俺もその人の下につきたいぞ!

ええいヨウ、お前もちったぁ見習えよ!

お前は事あるごとに喧嘩を買って(時に売って)恨みつらみを増やしていくんだからなっ。

飛び火は舎弟にまできているわけだし。
 

尊敬の念を抱く俺を余所に、

「悔しくねぇのかねぇ?」

俺なら腰抜けなんざ言われた日には喧嘩に明け暮れるけどな、とヨウは言い切りやがった。言い切りやがりましたとも。

うんそうね、所詮お前はそういう不良だよ。俺に苦労を掛けてくれるスンバラシイ不良だよ。期待した俺が馬鹿だった。
 
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