青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「洒落になってねぇええ―――!」
ちなみに知っているかい?
金属バットはジュニア野球や高校野球で主に使われているんだぞ。
何故ならボールが飛びやすいから!
プロが使っているバットは木製でボールが飛びにくいんだ。
ザ・田山豆知識! 覚えといてくれ!
っ、だから金属バットはボールに当てるものなんだよ!
頭をボール代わりにしたら、俺の頭は天国までホームランだっつーの! 地獄かもしれないけど!
野球道具を武器にする輩を冷静に見つめるリーダーは盛大に舌を鳴らし、二階フロア組に先に行くよう声音を張った。
自分達は一階の雑魚を受け持つと言い、道を作ってくれる。
最優先に喧嘩のできないココロを助けに行けと命令するヨウは、不良達の物騒さに懸念を抱いたようだ。
まったくもって俺も同じ気持ちだよ。弥生の持っている金属バットが可愛らしく見えるほど、敵方の持っている道具が凶器と化している。
それだけ憤っているのかなんなのか、とにもかくにも殺意に似た感情を抱いていることには違いない。
先頭を走る響子さんとタコ沢が現れる不良達を蹴散らし、俺と弥生が亡骸(語弊)を飛び越える。
ココロは二階フロアの男子便所にいるとは言ったけど、無事なのかどうか知りたいところ。
俺は携帯を取り出して、彼女に電話を掛ける。
ワンコールで出てくれたココロは俺の心配を霧散させるように無事だと教えてくれた。
が、機具越しにけたたましい音が聞こえて俺は肝を凍らせる。
「ココロ!」
階段をのぼりながら俺は彼女の安否を確認する。
ガンッ、ガンッ、と聞こえてくる物音からしてトイレの扉を蹴られているようだ。
どうやらココロの居場所が敵方に知られたようだ。
キャッとココロの悲鳴が聞こえてくる。
チッ、舌打ちを鳴らす俺は二段越しに段を上って先頭組と肩を並べた。
二階にも見受けられる不良。
どいつもこいつもカラフルな髪しやがってからにもう、お母さんが見たら泣くぜ!
「ケイ。任せた!」
響子さんが俺に彼女救出を任せてくれる。
「あっちだ!」
タコ沢に強く背中を押された。
刹那、タコ沢は振り下ろされたバットを左の腕で受け止め唸り声を上げる。
「タコ沢!」大丈夫かと声音を張る俺に、「谷沢だ!」さっさと行けと一蹴される。心配無用らしい。
しかも弥生がタコ沢を助けるように相手の脛をバットで叩いていたもんだから(すっげぇ行動力!)、俺は大丈夫だろうと判断。