青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


一目散に廊下を駆けて男子便所らしき空間に飛び込む。

目に映ったのはひとりの不良が最奥の個室を蹴りつけているところ。


あそこにいるのか。

俺は形振り構わず、相手に突っ込んだ。

まさしく捨て身タックル!
相手の手腕が目測できない以上、俺にできる先制攻撃だった。


扉向こうの人間に気を取られていた不良は俺の飛び掛りに気付くことが遅れ、一緒に転倒。
 

「なんだてめぇ!」


下敷きになった不良に睨まれて内心超ビビる俺だけど、ビビり田山になっている場合じゃない!

ココロから不良を引き剥がすために、俺は相手と揉み合いになる。

すぐに俺が扉向こうにいる仲間だと分かったのか、馬乗りになっている俺の胸倉を掴むや引き寄せてポジションチェンジ。

俺は相手に押し倒された。
 

「雑魚じゃねえか」

とか悪態を付かれて、

「自覚ありだよ」

俺は胸倉を掴んでくる相手の腕を掴んで爪を立てる。


息苦しさを覚えるけど、必死に足蹴りしてやる。

雑魚でも攻撃すればじわりじわり効くだろ?
相手の肘鉄が鳩尾に入るけど、必死にこらえて悲鳴を噛み殺した。

彼女が傍にいるんだ。

なっさけない声なんて出せないだろ! 
カッコつけ調子ノリを舐めるでねぇ!
 

と、唐突にトイレの個室の鍵が開いた。


次いで、「怪我したくなかったら」頭を下げてくださいね! と大喝破。

振り返った不良は突然のフルスイングに悲鳴を上げ、慌てて頭を下げる。


俺はといえば唖然のボーゼン。


だって彼女が不良の頭めがけてバットを振ったんだから。

ちょっ、ええぇえええ何してるのこの子!
物騒なことしちゃってからに!

バットはボールにめがけて振るものなんっすよアータ!

彼女でもさすがにこれは彼氏として説教もんだぞ!


めっ、だぞココロさん!
 

紙一重に避けた不良は何をするんだとココロに怒号を上げ、腰を浮かす。

その隙に俺は男としてはやられたくない急所蹴りをかましてやった。

更にココロがあわあわしながら相手の脛を蹴る。

急所攻めされた哀れな不良はその場に伏した。

うん、ごめん。
酷いことをしたって自覚はあるけど、こっちも身を守るため、仲間を守るため、必死だったんだ。
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