青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
一方、廊下に飛び出したモトは三人に追われ追われて逃げているところだった。
たった三人しか外に連れ出しことができなかった。
予定ではもっと外に連れ出す計画だったのだが、情けない結果となってしまった。
バットで一人の足に狙いを定め、それを投げて動揺を誘うものの、ひとりが転倒したところで追っ手の足が減速するわけではない。
さあてこれからどうする。
自分の力量では三人を相手取るなど無理だ。
護身のバットも既に手放してしまったし。
痛む体を無視しながら足を動かしていたモトは、廊下の向こうに階段を見つける。
この商社ビルはそれなりに金を掛けているのか、両端に階段が備わっているのか。
だったらこの際、仲間が来るまで三人と鬼ごっこというのも悪くはない。
体に鞭を売って階段に差し掛かったモトだが、下りようとしたその瞬間、曲がり角に身を隠していた人物。
スリの青年が目前に現れ、モトは瞠目する。
フッと笑みを浮かべる青年はその腕を引き、モトの足を引っ掛けると、
「ゲームオーバー」
すれ違い様に一笑。
うそ、だろ。
走っていたその勢いと、青年の腕の力によってモトの体が階段真上に飛び、そのまま転倒。
段差に体を打ちつけながら、踊り場まで転がったモトの傍を青年が素通り過ぎるが、それに一抹も気付くことはできず。
混濁する意識の中で、うつ伏せのまま何が起きたのだと状況把握に努める。
だが何も分からない。
思考も回らない。
身体も動かない。
気配が近づいて来た。