青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



キヨタが落ち着きを取り戻すに、かなり時間を要した。

言葉を掛けても何をしても嗚咽ばかりが漏れるわ、涙は止まらないわ、しゃくり上げるわ。

こんな状態じゃ店に入ることは不可、俺はキヨタを高架橋下に連れて行くことにした。


途中で出店を見つけたから、そこでたこ焼きを購入。


今日は大盤振る舞い、奢り日和だと思いながらジュースも一緒に買ってキヨタとそこで食べた。

もっとも、その時のキヨタはまーだ泣いていたから先に俺が完食。


キヨタはたこ焼きを口に入れながら、グズグズもひもひジワっごっくん…、ああ、もう、食べるか泣くかのどっちかにしろって!

喉に詰まらせないかすっげぇ怖いぞ!
食えなかったら残してもいい!


俺が食うから!


はらはらしつつ、キヨタの食べる姿を横目で見ていた俺は力なく笑って缶コーラを傾ける。

喉を潤した後、「なあキヨタ」まだ上手く喋れそうにないキヨタに話しかけた。

なんでしょうかと目で訴えてくるキヨタに、「どうして俺が土地に詳しいと思う?」と話題を吹っかける。


勿論、自転車であっちこっち行くからじゃないだろうか?

あくまで視線で訴えてくるキヨタに、うんっと頷き、大正解だと破顔。


「チャリでさ」


隣町までよく行ったもんだよ。

迷子になって交番にお世話になったこともあった。

缶に耳をあて、炭酸の音を聞きながら俺は思い出話に花を咲かせる。

 
「よく馬鹿したもんだよ。電車賃が勿体無いからって、健太と五駅向こうの町に行ってさ。行きはよいよい帰りは怖い。帰りは遅くなるわ、親に怒られるわ、翌日は筋肉痛だわ。踏んだり蹴ったりもいいところだった。
……でも楽しかったんだ。チャリであっちこっち行けるの。実はさ、俺、小5までチャリに乗れなかったんだよ」


グズッと鼻を啜るキヨタが、「え?」と聞き返してくる。
 
「まじまじ」

恥ずかしいから誰にも言ったことなかったんだけどな、俺は照れくさくなりながら語りを続ける。

なんというか、べつだん引きこもりじゃなかったんだけど、活発的に外で遊ぶってタイプでもなくって。

特にゲームに夢中になってたってのもあるんだけど、チャリになっかなか興味を持てなかったんだ。小学校時代は。
< 446 / 804 >

この作品をシェア

pagetop