青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
んである日、事件は起きた。
俺がチャリを持って練習しに行こうとしたら、弟がついてきたわけだ。
まーだちゃんと乗れていないのに、俺に遊んでもらおうと弟が補助輪ありのチャリ持ってついてきた。
ぐぎぎっ、どうする。
弟を突っぱねたら泣かせるのは一目瞭然。
親に叱られるし、連れて行くしかない。
追い撃ちを掛けるように補助輪ありのチャリに乗って前進する弟が、手押しでチャリを押す俺に乗らないのかって聞いてきた。
大ピンチ! 乗らなきゃ怪しまれる!
もうどうにでもなれぇえ!
そう思って勢いのままチャリに乗ってかっ飛ばした。
そしたらどうだ。普通に乗れたんだよ。
人生勢いも大切なんだって、俺は小5で悟ったよ。
それから俺はチャリに乗る楽しさに目覚めて、あっちこっち行くわけだ。
内心ずーっと羨ましかったんだよ。チャリに乗れる皆がさ。
とうとう皆に追いつけたんだって思うと、めっちゃはしゃいでそれからチャリ三昧。
ご近所を駆け回った。裏道から大通りから隅々まで。
「そうして土地勘が長けていった。不思議だよな。これが俺の武器になるなんて、あの頃はちっとも思っていなかったんだから」
チャリのこともそう。
皆に追いつけたのが嬉しくて乗り回していたら、いつの間にかチャリが大得意になった。
チャリのおかげでヨウと知り合い、こうして舎弟になった。
偶然って本当に不思議なもんだ。世の中は偶然で出来上がっているのかもしれない。
俺の昔話にキヨタは信じられませんね、とようやく喋れるレベルに達したのか、弱弱しく笑ってくる。
「だろ?」恥ずかしいから誰にも話したことなかったんだ、俺はそっと頬を崩した。
小5まで乗れなかったとか俺の黒歴史そのものだよ。
ヨウ達に言えば爆笑されるから、ぜってぇ言わないけどな。
「キヨタはどうして合気道を習い始めたんだ?」
スンッと鼻を鳴らすキヨタは、「親がしろって」だからし始めたのだと苦笑い。
別に特別な理由はなかったらしい。爪楊枝でたこ焼きを刺し、たこを探しながら、「俺っち」いつも試合で負けていましたと暴露。
体躯の関係ですぐ負けてしまったそうな。
それが悔しくて合気道に打ち込み、いつの間にか全国切符を手にしていたとか。