青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
でも純粋に不良に憧れ、合気道をやめて悪ぶってしまったのだとキヨタは教えてくれる。
親からは大層叱られたらしい。
だろうな、勿体無いくらいキヨタは強いもんな。
けどキヨタは首を横に振って、「強さはあっても」結局俺っちは弱いのだと、声のトーンを下げる。
「俺っち、自分に何ができるか…、全然わからなくて。ヨウさんみたいに、リーダーシップがあるわけでもない。モトみたいに他人を纏めることもできない。
ケイさんの舎弟になれるのって、結局腕っ節しかないんだって思っていました。でも守れなくって」
「この怪我のことか?」
俺は右の手に貼ってある湿布をキヨタに見せる。
頷く弟分に大した怪我じゃないって言ってやるんだけど、キヨタは眉をハの字に下げるばかり。
「兄分も守れない」
他に長けるものもない、じゃあ俺っちは貴方に何ができるんですか? キヨタは問い掛けてくる。
ケイさんには舎弟なんて不要かもしれませんね、ネガティブな発言に俺は苦笑。
「じゃあ俺は」
キヨタに何ができるかな?
同じ質問を返した。
だって俺はチャリと土地勘しか取り得がない。
いざって時、弟分も満足に守れない。
そんな俺に何がしてやれる?
そう質問すると、「ケイさんにしてもらいたわけじゃないんです」と返答がかえってきた。
なるほど、じゃあ俺もそうだ。
キヨタに何かしてもらいたいってわけじゃない。
ヨウに関しても同じ。あいつに何かしてもらいたいから舎弟になっているわけでもないんだ。
あいつは俺の舎兄、俺はあいつの舎弟、異色の舎兄弟として名が通っているけど、べつに特別何かをして欲しいわけじゃないんだよ。お互いに。
「俺がキヨタを弟分にしている理由はな。
俺自身の力量を問題視しているからなんだ。俺は弱い。弱いのに舎弟を作る。そんなんでいいのか?
舎兄の背を見てきた俺だからこそ、自分が舎兄になれるのか不安だった。
今、思うとお前に失望されるのが怖かったのかもしれない」