青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「こんなことなら圭太個人とおデートすりゃ良かったぜ。トンズラしたい」
「まだ来て10分だぞ健太さん。まったく最近の若者は忍耐力がなくて困る」
「我慢は体に悪いんですよ?」
それに現代の若人は苦労ばっかじゃないですか。
就職難に不景気、団塊世代からは軟弱だといわれ、中年の大人達から侮蔑される。
今の中高大生は苦労すると健太は鼻を鳴らす。
我慢していないようで多大な我慢を強いられている。
不満を漏らす健太に同調する俺は、不良への忍耐力は計り知れないよなとオーバーリアクションを取った。
まさしくそれだと健太はがっくり肩を落として、ブレザーのポケットに手を突っ込む。
「ヤマトさんやアキラさんの喧嘩っ早さに、こっちは飛び火を食らう一方。ったくもう、勘弁して欲しいぜ」
「ははっ、俺もだよ。ヨウやワタルさんの喧嘩っ早さで何度私怨を買ったか分からねぇや。ッ、アウジ!」
突然上がる俺の悲鳴。
目を丸く健太はどうしたのだと声を掛けてくるけど足…、今、誰かに足を踏まれっ…、俺は犯人を捜すために視線を流した。
で、引き攣り顔を作るわけだ。
俺の足を踏んだのは元クラスメートで日向女子に位置づけられる、俺や健太の最も苦手としている女。毒舌の波子!
出たな、俺の疫病神!
可愛らしい桃色のワンピースを身に纏っているけど、その色に反して毒舌はおどろおどろしいオーラを放っていた。
「邪魔」ヘボ山のくせに、と毒づいて睨んでくる某毒舌女は開口二番に俺の身なりをダサイと称してきた。
俺はピキッとこめかみに青筋を立てる。あいっかわらずいけ好かない女だ。
いっくら幾多に渡って怖い不良をノリで回避してきた俺でも、こいつの誹謗中傷にだけはっ、毒舌にだけはっ、アァアアアア、胃に穴があきそうであーる!
どうする?
此処は反論するべきか、それとも完全無視を決めるべきか。
こいつと関わってイイコトがあったか? なあ?!
「今日あんたが来るなら来なきゃ良かった。ダサイが感染る」
決定。
こいつは完全無視だ。相手にするだけ俺が馬鹿みる。
「健太行こうぜ」
此処は空気が悪い、フンと鼻を鳴らして俺は場所移動開始。
「え、おう」
戸惑いながら健太が後を追って来る。