青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
一部始終傍観していた健太は、微苦笑を零しながら俺に割り箸を回して、
「お前いつの間に」
勇者になったんだよ、とおどけてくる。
馬場波子は中学時代は自他共に認める苦手女。
喧嘩を売ってはいけない、関わってはいけない、反論してはいけないの三原則が暗黙のルールであったというのに、それを敗れるなんてお前は勇者だ。健太は隣で不貞腐れている俺の背中を叩く。
「煩いなぁ」
俺だって好きで勇者してるんじゃない、向こうが喧嘩を売ってくるから買っているだけだと唇を尖らせた。
「あ、田山田コンビじゃんか。ん? 山田山コンビ? まあどっちでもいいや。久しぶりだな、お前等」
前方から声を掛けられる。
俺と健太は視線を上げ相手を確認。揃って武藤じゃんかと頬を崩す。
俺達に声を掛けてきたのは武藤 秀弥(むとう ひでや)。
中学時代につるんでいたジミニャーノくんだ。
超背が高いんだ。
180超あるんだぞ。
何を食えばそんなにでかくなれるんだろう?
特別すごい運動をしていたわけでもないのに。
ちなみにこいつ、めっちゃギャルゲーするオタクさんだったりする。
ぱっと見そんな感じじゃないんだけどな。
こいつのお嫁さん(ゲームキャラ)を幾度となく見せてもらったことがある。
熱弁させると止まらなくなるから、俺も健太もあんまりお嫁さんについては触れないんだけどな。
武藤の隣には眼鏡をかけたぽっちゃりくん、東島 瀬那(とうじま せな)の姿も見受けられる。
こいつも俺達とつるんでいた日陰男子で親しみやすい。
やや肥満気味なのは実家が和菓子屋だからだ。
本人曰く、体躯の七割は砂糖でできていると冗談を口にしている。
ダイエットをする気はさらさらないらしい。
寧ろダイエット本なんて滅べばいいとか。
恐ろしい奴だ。
また一回りでかくなったんじゃないか? 縦にも横にも。