青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
俺の近況報告を笑う健太は、楽しそうな毎日じゃないかとタン塩を取って皿にのせる。
楽しいっていうか苦労する毎日だって。
気兼ねなく健太に愚痴った俺は、「お前は?」どうなんだと注文したビビンバを店員から受け取り長匙を持つ。
一変して表情が曇る健太を俺は見逃さなかった。
何かあったのか、中身をかき混ぜながらさり気なく健太の心に触れてみる。
まさか日賀野と喧嘩したわけじゃないだろう。
あいつと喧嘩したらどうなるか?
答え、俺のような日賀野不良症候群を持つことになります。
健太は俺と違って純粋にあの性悪日賀野を慕っているから、喧嘩しているとかそんなのは想像もつかないんだけど。
「上手くいっていないのか?」
掬ったビビンバを冷ましながら、俺はそれを口に入れて頬張る。
「いや」
上手くいっているよ、チームは楽しいんだと健太は海草サラダに箸を伸ばす。
「悩みが無い。そう言うと嘘になるんだけどさ」
「勿体つけてないで話してみろって。俺、べつにお前のチームに告げ口する気はないぞ?」
力なく笑う健太は海草を箸で摘み上げて、「見られているんだ」静かに呟く。
面食らう俺を余所に健太は徐々に胸の内を明かしてくれる。
最近、誰かに見られている気がするんだと。
いや見られている。
これは確信している。
確信するものを手に入れてしまった。
健太は一抹の恐怖心を俺に曝け出した。
「見られている?」
ストーキングでもされているのか?
健太に詳細を話してくれるよう頼む。
健太はそっと口を開いて教えてくれた。
それは帰路を歩いている時、学校に登校している時、たむろ場を後にしてひとりで街を歩いている時、ふっとした瞬間に感じる悪意の視線。
まるで体中を嘗め回されているような視線を日夜感じている。
一日二日前の話ではない。此処暫くそれが続いているのだと健太は苦々しい面持ちを作り、摘んでいた海草サラダを皿に戻す。
そしてブレザーのポケットから四つ折りにされている紙を俺に差し出した。
匙を置き、俺は紙を受け取ると中身を開く。
目を見開いた。