青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



【必ズ迎エに行キマス】



ワープロで打ったであろう、印刷された一行文字に俺は身の毛がよだつ。

なんだよこれ。気持ち悪い。

まんまストーカーのすることじゃないか。


俺は健太に視線を流す。

掻いた胡坐に視線を落とす健太は、

「郵便受けに入っていたんだ」

自分宛ての手紙だったのだと苦言し、誰に愛されちまったんだよおれ…、と額に手を当てた。


「いつからだよ?」


腫れ物を触るような声で問い掛けると、

「二週間くらい前から」

もう病みそうなのだと健太は重々しい溜息をつく。


んで、俺の両肩をガシっと掴み、ぐわんぐわん揺すってきた。
 

「怖くね怖くね怖くね! もぉおお、おれ、ホラー小説の世界にでも飛び込んじまったのか?! って思うほど怖くてさ!
圭太ぁあああどうしよぉおおお! 迎えってどこだよ! 天国? それとも地獄?! おれ、そんなに悪いことしちゃないっ、ちょっち悪ぶった地味くんだぜ!」


「お、お…落ち着けって!」


「落ち着けるかぁああ! おぉおおおれ! 女の子にモテるならまだしもっ、得体の知れない輩にっ…ぎゃぁああああ怖過ぎる!」
 

ずっと我慢していたのか、健太が半狂乱になって俺の体にしがみついてきた。

ガタブルで死にたくないと震えている。

どんだけお前は我慢していたんだよ。


どうどうと宥めながら俺は相手の体を押し返して手紙を一瞥、四つ折りにして健太に返しながら、誰かに相談はしなかったのかとクエッション。


こんなこと誰にも言える筈ないじゃないか、健太は唸りながら紙を受け取り、ポケットに捻り込んだ。


それこそチームに相談すれば良かったじゃないか。

日賀野に相談すれば、きっといい知恵を貸してくれる筈だぞ。

あいつは策士だから、絶対解決法を見つけてくれると思うんだけど。


俺の助言に健太はできないのだと吐息をつく。

チームには相談できないと頑なに助言を拒む始末。

理由を尋ねると、「おれ個人のことで」チームに迷惑を掛けたくはない。


健太は力なく答えて、食べかけの海草サラダに目を落とす。
 
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