青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
いつもの笑みを浮かべる健太に俺も笑みを返して、「なんかあったら」すぐ相談して来いよ、俺はビビンバの中身を長匙で混ぜる。
それこそニキビができた、なんてクダラナイ相談だって受け付けるさ。
お前は俺にとって大事な友達なんだから。
笑声を漏らす健太は「おれも愛されているねぇ」やばいやばい、惚れそうじゃないかとおどけてくる。
それでこそ調子ノリ健太だ。
俺も安心だよ。
二人で笑い合っていると、「ねえねえ」クラスメートが話し掛けてきた。
こっち来て話そうよ、意味深な言葉と共に女子が綻んでくる。
たしかこの女子の名前は八坂さんだ。
野郎だけで話していても面白くないでしょ、とか言ってくる八坂さん。
まんま合コンのノリだなこれ。
「今ね。フリーかどうか聞きまわっているんだけど、二人は? 二人ともイケ始めたじゃん。まあ、中学よりは」
誰がどう聞いても世辞だって分かるよ八坂さん。
んでもってイケたとしても俺達、悪い方にイケ始めたから!
「おれはフリーだよ。圭太は超可愛い彼女がいるけどな」
「ゲッ。マジかよ!」
話に食らいついてきたのは武藤だ。
「お前は彼女なんて作るタイプじゃなさそうだったのに、学生のうちは絶対フリーだと思っていたのに! 自分抜け駆けですか、リア充め!」
捲くし立てる武藤に俺は苦笑い。それはどういう意味だよ。
「山田くんフリーなんだ」
じゃあ今、フリーになっている波子とかどう?
面の笑みを浮かべてくる八坂さんは、小声で健太に囁いた。
途端に血相を変える健太は冗談じゃないとばかりに首を横に振った。
なんで自分じゃなくて他人をチョイスするのか分からないけど、でもイイコト聞いちゃったな。
あの人、今フリーなんだ。
へぇぇえ、人の恋愛事情は鼻で笑っておいて自分はフリーの御身分ですとな?
中学時代にお付き合いしていた彼氏様はどうしたんでしょうかね?
毒舌に耐えかねて逃げられちまった?