青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「よ、ヨウ。もう許してくれないか? な? 俺、お前のプロレス技を食らって体の節々がやばいやばいんだけど」
「なんにも話していないお前が悪い」
「いや、だからおデートだと「あ゛ーん?」とちょっとした+αがあったかなぁ。あははっ」
母音に濁点は付けるもんじゃないぞ、ヨウ。それは間違った日本語だ。
さあてどう説明しようか。
脳内で言い訳を考えていると、俺の机上に置いている携帯が震え始めた。
「おーっとお電話だ!」
素早く立ち上がる俺に、
「その電話には出るのかよ」
極上の笑みを浮かべて握り拳を作る兄貴の姿一匹。
いやマジでごめん! あれにはワケがあってだな…。
しどろもどろになりながら携帯を引っ掴んで相手を確認する。
日賀野だったら追々面倒になるしな。
あいつ、人をおちょくって苛める傾向があるから、一応相手を確認してスルーできるかどうか―――…、できるわけなかった。
俺は片手を出してごめんポーズを取ると廊下に出て電話に出た。
相手は今回の被害者、山田健太。
まさかあいつが電話を掛けてくるなんて思わなかった。
今日は無理だと思っていたから。
『今、大丈夫か?』
健太に気遣われてしまうもんだから笑ってしまう。
お前こそ大丈夫なのかよ、気は落ち着いたのか。
意味合いを含めて俺は、大丈夫だと返事する。
それだけで相手に伝わったんだろう。
もう落ち着いたと返事してくる。
今は魚住の部屋にいるのだとか。ちなみに部屋の主は入浴中、だから電話できるのだといつもの口振りで言う。
『ごめんな』健太は俺に謝罪してきた。
不要の詫びだったから、俺はそれを一蹴する。お礼もいらないから一蹴させてもらうことにする。
俺はしたいことをしただけなんだから。