青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


『でもさ。お前、黙ってこっちに手ぇ貸したんだろ? 双方停戦は結んでいるけどさ…。仲が改善されたわけじゃない。怒ってるんじゃないか? 荒川さんとか』

「ヨウは心の広い奴だから、そんくらい笑って許してくれたよ。いやぁ我が兄貴は寛大かんだい!」


というか何もまだ話していないんですけどね。
 
俺は襖を開けてこっちを見据えてくるヨウに誤魔化し笑いを浮かべると、素早く襖を閉めた。

盗み聞きは趣味悪いぜ、兄貴!


信用してくれたのか、健太は良かったと一笑してくる。

俺のことを心配してくれていたようだ。馬鹿だな。

俺のことなんて気にしなくていいのに。

今は自分のことだけを考えておけばいいのに。


怖い思いをしたのは誰でもない健太だ。


その旨を伝えると、『おれ』いっつも圭太には助けられてばっかだな、健太が若干声に湿っぽさを含ませる。


『絶交したあの時も、関係に苦しんでいた時も、今回も…、お前はおれを助けてくれた。圭太はいっつもおれを助けてくれる』
 

あの時、圭太があのメールを送ってくれなかったら…、おれ、電話を取るさえもやめていたと思うんだ。

一度電話が途切れただろ?
その時、おれ、気が焦って間違ってボタンを押しちまったんだ。

すぐ掛けなおそうと思ったんだけど、タイミング悪く例の奴からメールが来て、怖くて、何もできずに縮こまっていたんだ。

何をしても無駄、助けを求めても無駄。

それだけのメールだったけど、どっかでおれを監視しているんじゃないか、そう疑心を向けてしまうほどそのメールの内容は鳥肌が立って。


ただでさえ状況が分かっていなくってパニックになっているおれだったから、メールでトドメさされちまって。

何もかもが分からなくなって、頭真っ白になったんだ。

視界は利かない。
扉も開かない。
どうすればいいかも分からない。
チームに頼るべきなのかどうかも分からない。

おれはどうして此処にいるのか、なんでこんなことになったのか、なにもわからない。


現実逃避を起こして身を小さくしていた時、お前からメールが来た。


悪質手紙と同じ内容のメールが来た時は呆然としたけど…、瞬く間にお前が約束してくれたことを思い出した。
 
落ち込んでいたおれにおざなりの約束をしてくれたと思っていた、あの約束。 
 

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