青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
これが果たしてダブルデートになるのかどうか微妙なところだけど弥生の案の下、俺達はドーナツ屋に足を運ぶことになった。
駄弁りたかったんだろう。
先にドーナツと飲み物を注文し、手渡されたトレイを持って俺達はボックス席を陣取る。
野郎同士、女子同士で座るのがいつもの流れなんだけど、今回はカップル同士で座るという…、まあダブルデートらしいシチュエーションである。
美味しそうだと綻ぶ弥生のトレイには五つほどドーナツが載っていたり。
取り過ぎじゃね? 弥生。太るぞ。
なーんてデリカシーもくそもなくツッコもうと思ったんだけど、シズの食べっぷりを思い出し、俺は言葉を嚥下した。
弥生のドーナツの数なんて序の口序の口、あいつは一気に十つも取っておかわりするんだからな!
それに女子は体重を気にするらしいからな。
こういうことは思っても言っちゃいかんのですよ。
俺は空気を読むぞ。
余計なことを言いそうになった俺の努力が霧散されるのはこの直後。
ハジメが「取り過ぎじゃない? 太るよ?」と、まさしく俺が思ったことを率直に言いやがったんだよ。
お前さ、そういう余計な発言が喧嘩に発展するんだって気付いているか?
案の定、弥生はぶっすーっと不機嫌なって食べたいから食べるのだと突っぱねてしまう。
ほっらぁ。言わんこっちゃない。もう少しデリカシーには気を付けようぜ、ハジメ。
喧嘩しないことを願いながら、俺は自分の頼んだドーナツを半分に割った。
ちょっち視線を感じたから俺はココロに皿を出すよう言う。
何も言わず自分の皿を差し出してきたココロは俺のドーナツを受け取ると、既に半分に割られているドーナツを自分の皿から取ってくれるよう申し出た。
あいよ、俺はココロのドーナツを皿から二つ取ると自分の皿へ。
「あ。ココロ、このドーナツは手がギットギトになりそうだ。中にはクリームが入っているし…、割ったら型崩れする。先に食ってくれ」
紙ナプキンに挟んでドーナツを差し出す。
「わぁあ、ありがとうございます」
ココロは嬉しそうに俺の手を取ってそのドーナツを齧り付いた。
俺はそれに一笑し、ちゃんとクリームのところまで食べて返すようにと注意を促した。
このドーナツはクリームと一緒に食べてこそ美味いだろうからな。