青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
小さく溜息をついて、俺は携帯を閉じる。
ココロが此処まで期待しているかどうかは分からない。
でも何かに期待していることは確か。
それに応えたい俺がいるのも確か。
んでもって俺自身が望んでいるのも確か。
ふーっと息をつき俺はテレビを観る振りをしつつ物思いに耽る。
ボケッとしていたせいか、ココロが夕飯を作って運んでくれる時間がやけに短く思えた。
運ぶくらい俺でもできたから、声を掛けてくれば良かったのに。
相手に物申すんだけど、ココロは自分がしたいのだと笑い、二人分の食事を並べ始める。
「あ。肉じゃが」
大好物に俺はつい声を上げてしまった。
ふふっと笑声を漏らすココロは、「ケイさんはジャガイモ料理がお好きですもんね」と頬を崩す。
そうなんだよ。
ジャガイモって美味くね?
芋の中でいっちゃん美味いと思うぞ。
コロッケも大好きだし、ポテトサラダも好きだし、じゃがバターとか最高じゃんかよ。
「ケイさん。ピーマンもちゃーんと食べてくださいね」
う゛、俺は声を詰まらせる。
ココロが俺の前に置いてきたのは、鶏とピーマンの生姜煮。俺の苦手な野菜っ…、ピーマンは俺の敵!
いや食べる、食べるけどさ!
まさかピーマンが出てくるとは。
ノッケから四天王と戦う気分だな。
「ピーマンか」睨めっこする俺に、「苦手克服です」頑張りましょうとココロが破顔してくる。
その笑み、ちょっち今の俺には堪えるかも。
苦笑いを浮かべつつ、俺はお箸を取って頂きます。
早速ピーマンの生姜煮にチャレンジした。
大嫌いなピーマンを一口放ってみる。
嗚呼、口内いっぱいに広がるこの独特な苦味が…、苦味…、あれ、思ったほど苦くないような。てか全然苦くない。
「ん? ピーマン?」
首を傾げる俺に、ココロは大成功だとばかりに手を叩いた。
「ピーマンって皮が苦いんです。だから皮さえ剥いてしまえば、苦味は消えてしまうんですよ。
些少は風味が残ると思いますけど、生姜で匂いをある程度消していますし、食べられないことはないと思います」
「ううん、普通にイケるよ。俺、ピーマンの苦味がどうしても駄目でさ。食えないことはないんだけど、残すことが多くて…、サンキュ。めっちゃ美味い」