青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「―――…え、じゃあディープキスはしなかったの?」
翌日のスーパー付近倉庫裏のたむろ場にて。
ココロはダブルデートを仕組んでくれた弥生に、こっそりと昨夜の出来事を報告していた。
彼女は好敵手が現れても簡単に距離が詰められないように、わざわざダブルデートまで仕込んで刺激を与えてくれたのだが、結局自分は彼氏とディープキスというアダルトタッチなキスはできなかったと苦笑する。
「ケイのヘタレ」
あんなに追い詰めたのに…、弥生は憮然と肩を竦めた。
「お子様なんですよ。私達」
ココロは自分も怖じてしまったのだと吐露。
自分達のペースで進展していくしかないのだと気付いたのだ。
次いでココロは弥生に向かって微笑する。
「弥生ちゃんの言うとおり、ケイさんって隠れ肉食だと思う。結構強引なところがあったから」
ディープこそできなかったけれど、それに似つかわしい行為を貰ってしまった。弥生の用意した刺激は十二分に効果を発揮したのだ。
「強引にさせたのは」
私自身の駆け引きが実ったこともあるからかもしれない、ココロは悪戯っぽく笑みを零す。
やるじゃん、弥生は目尻を下げて茶髪の髪を風に靡かせた。
「恋愛って受け身じゃ絶対駄目なんだよ。
男が動く。それが当然。
そんなの漫画の世界だけ。リアルの世界じゃ通用しないんだ。
駆け引きする努力くらいしないと…、それが女の強みでもあるんだしね。
あーあ、それにしても羨ましいな。彼氏がロールキャベツ男子とか…、私の彼氏、生粋の草食系男子だからさ。ディープを仕掛けたの、私だったりするんだ」
「や…、弥生ちゃん…、大胆だね」
「しょーがないでしょ。ハジメがドドドヘタレなんだから。私が攻めていかないと、なっかなか進展しないんだよ。その点、ココロは羨ましいよ。
あの子に負けちゃ駄目だよ。過去のケイを知っているのがあの子だとしても、ココロの強みは今のケイを知っていることなんだから」
助言と励ましにココロは小さく頷き、倉庫内をぐるっと見渡す。
目的の彼氏を見つけた。彼氏は地図と睨めっこしている舎弟とナニやら話している様子。
さっきは舎兄と騒いでいたというのに、本当に忙しい人だ。自分の彼氏は。
自分に気は回してくれるけれど、受け身のまま彼がこっちに来てくれるのをいつまでも待つ、では時間だけが過ぎてしまう。
ココロは彼氏が倉庫の外に出ると気付き、両手を合わせ弥生に謝罪すると会話を打ち切って駆け出した。