青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
◇ ◇ ◇
「へえ、シズ。ついに一人暮らしが始まったのか!」
昼休み。
体育裏であんぱんを食っていたヨウがものすっごく羨ましそうに声を上げた。
俺の一報にらんらんと目を輝かせている。
こいつ、早速遊びに行く気つもりだろ。
心中で苦笑しながら俺は小さく首肯し、土日を使って家族総出で引越しの手伝いをしたのだと教える。
我がチームの副リーダー・相牟田静馬は家庭と揉めてここ暫く俺の家に身を寄せていたんだけど、ようやく寝床が決まったんだ。
俺の親と向こうの親が出す予算を十二分に話し合った結果、俺の家から七分掛かる賃貸アパートの一室を借りることが決まった。
両親はシズさえ良ければ向こうの親と話し合って家に置くことも可能だって言っていたんだけど、シズは自分で生活していきたいのだと決心を告げて、一人暮らしに踏み切ったんだ。
アパートって響きは悪いけど、洋式の1DK(二階)でめっちゃ綺麗だった。
予算もそれなりに見合っていたし、ひとり暮らしをするには充分な広さだと思う。
最初こそワンルームにしようと言っていたんだけどさ、俺の家の近くに良いワンルームがなかったんだ。
立地条件の悪いワンルームしかなくて。
シズはべつにワンルームでも良いって言ったんだけどさ、母さんがある程度良い部屋にすべきだって押し切ったから、めでたく洋式の1DKに決まった。
いやはや、シズ以上に母さんが燃えていたんだよな。
「男の子とはいえ」まだ高校生、不審者の現れそうな通りは論外だって言って…、まあ、でもシズは苦労しているんだ。
シズの実父が予算と賃貸を聞いて快諾したんだし、有意義に一人暮らしを満喫すればいいと思う。お
母さんがどう思っているかは分からないけど…、シズは多分お母さんにまだ報告していないんじゃないかな。
そうそうシズが我が家から出て行くと知って、浩介がすっげぇ寂しがったんだよな。
「静馬兄ちゃん行っちゃヤダ!」とか駄々捏ねるんだもん。
シズって超人が好いから、浩介の相手をよく看てくれた。
だから浩介のお気に入りになっちまって。
けど最後はちゃーんと納得して土日の手伝いは人一倍熱心にこなしていたよ。部屋に遊びに来ても良い? とか図々しいこと聞いていたっけ。
日曜の夜からシズの一人暮らしは始まっている。
とはいえシズも分からないことだらけで土日は引越しの片付けやら、洗濯機の使い方やら、ゴミ出し日、ゴミの分別を母さんから伝授されていた。
夕飯は我が家で食ったしな。
本格的に一人暮らしが始まったのは今日からと言っても過言じゃないだろう。