青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「ふーん。羨ましいなぁ、僕も一人暮らしをしたいよ。親が煩いんだ」
話の輪に入ってきたハジメが、缶コーヒーを飲みながら肩を竦める。
ハジメの親はモンスターペアレントに近いものがあるもんな。
どっちも弁護士さんってのはすごいけど、過度なまでに勉強させようというところは頂けないや。
ハジメには悪いけどあんま好い印象は持っていない。
「俺もだ。親父と顔を合わせる度に、『庸一。お前はまだ愚行を犯す気か?』だって。うるせぇってんだ。
俺がおとなーしく家にいたらいたで、暇人とか罵るくせによ。俺にどーして欲しいんだ?」
フンッと鼻を鳴らすヨウに俺は苦笑い。
ヨウのお父さん、顔は端整でカッコイイけど厳しいもんな。
人前でも堂々と張り手かますし。
世間体を気にする親だってヨウからは聞いている。
こっちの御両親も、ヨウには悪いけどあんま好い印象は持っていないや。
「大変そうッスね。俺っち、姉貴達が一人暮らしって大変って言ってましたッス」
「え、キヨタ。姉ちゃんがいるのか?」
隣でモトとPSPをしていたキヨタが元気よく頷く。
「兄姉達が一人暮らしなんっス」
と舎弟が教えてくれる。
兄姉達? ってことはまだ兄弟がいたりするのか?
疑問符を浮かべていると、「キヨタのとこ七人兄姉だぜ」モトがゲームをしながら教えてくれる。
な、七人兄姉?!
目を丸くする俺達に、キヨタは言ってなかったですっけ? と首を傾げる。
「俺っち、末っ子なんっス。一番の上の姉貴はもう三十路近くて、結婚してますっス。で、社会人になっている姉貴が二人、兄貴が一人。専門学生の姉貴に、大学一年の兄貴、最後に俺っちになってますっス」
うっわぁあ…、お母さん頑張り過ぎだろ。七人も子供を産むなんて。
お母さんは少子高齢化している日本に十分貢献しているよ。
すごい、ほんっとすごい。
あ、でもキヨタが末っ子ってのは分かる気がするな。そういう空気が漂っているもん。
いっつも兄姉からおもちゃにされていたのだとぶすくれるキヨタは、
「真の兄貴は貴方だけですぅう!」
俺に飛びついてきた。
弁当を落っことしそうになりながら、俺は舎弟の体を受け止める。
まったく今日も俺はキヨタに愛されているんだぜ。
嬉しい限りなんだぜ。
ちょっち色眼鏡で見てくるのが困るんだけどさ!