青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「話は戻すけど、シズが落ち着いたらさ。皆でお祝いしてあげようよ。プレゼントに使えそうな日用品を用意してさ! 鍋パーティーとか楽しそうじゃない?」
 
 
弥生が案を出した。
 
こういうパーティー事が弥生は大好きなんだ。
んでもってリーダーも賑やか行事が大好きだから、大賛成だと指を鳴らす。

誰かの家だったら気兼ねなく飲酒ができるとか悪い子ちゃん発言しやがった。

結局そこにいくんだな、お前は。

好きだよなぁ、なんちゃって悪いことするの。
未成年のくせにさ。


で、大抵悪い子ちゃん発言をしたらワタルさんが乗ってくるものなんだけど、今のところ不在だったりする。


学校に来ていないみたいなんだ。理由は分からない。

けれどワタルさんのことだから、そのうちひょっこり顔を出すと思う。

おサボリしている可能性は大だ。


神出鬼没だからな。

きっとこんな話をしていたら、「なあに話してるんだっぼーん?」ほおらきた。


「ワタルさん、丁度良かった。今、シズの一人暮らし……、どうしたんですか…、その姿」


俺の言葉は途切れてしまい、一変して瞠目。ヨウ達も目を削いだ。

脱いだブレザーを肩に掛けて現れる姿はまるでトラさん。

でも制服の汚れや、ワタルさん自身の怪我を見る限り、男はつらいよごっこをしているとは到底思えない。

切れた左口端を舐めて、よろっと体勢を崩しつつ、「参ったまいったけ」うざ口調でこっちに歩んでくる。
 

喧嘩でもしてきたんだろうか。

ワタルさんらしくない酷いヤラれ方だけど。


段に座り込むワタルさんの怪我を見るや、弥生がハンカチを濡らしてくると手洗い場に向かった。

お頼み申します、ひらひらっと手を振るワタルさんは参ったと染めたオレンジ髪をぼさぼさに乱して溜息。


髪が邪魔だったのか、黒の髪ゴムで一つに結い始める。


「どうしたんだよワタル」


お前は鬼畜不良だろ?
鬼畜返しでも食らったのかとヨウ。

にへらへらと笑うワタルさんは、そんなところだと両手を挙げた。


「僕ちゃーん、Mじゃないんだけどね。ちょーっち仕掛けてきた敵さんがエスい方々ばっかりで。人数の多さに本能的危険を察知して…、逃げてきたっぽーん」
 

何人かは伸してきたんだけどねー。
 
間延びした言い方のおかげで、出来事が軽く感じられるけど重々しい事件だ。

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