青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
ワタルさん曰く、昨晩に見知らぬ不良達に因縁つけられて、その人数の多さに危険を察知して逃避。
今朝も学校に行く途中、奴等に遭遇して拳を振りつつ逃げてきたのだという。
ワタルさんに因縁を持つ不良は沢山いると思うけど、なんか卑怯だなそれ。
ワタルさんは鬼畜でドエスだけど、卑怯染みた行為だけは絶対にしない。
さすがは直球リーダーを選んだだけあって、やり方は真っ直ぐだ。
だからこそ不良達のやり方には憤りを覚えてしまう。
「ちょっちヨウちゃん。手ぇ貸してくれない? 僕ちゃーん、愛され過ぎて困ってるんだけど」
へらへらっと笑う表情に覇気がない。かなり逃げ回って此処に来たんだと思う。
承諾するヨウを見やった俺は、「キヨタ」舎弟に声を掛け、その長けた力を貸してやって欲しいと頼んだ。
勿論だと首肯するキヨタは、どれくらい人数がいたのかとワタルさんに質問する。
唸り声を上げてざっと十五人はいたんじゃないかとワタルさん、あくまで目測らしいけどかなりの人数だと思うぞそれ。
「どーもそいつ等。新手のチームみたいんぐ。いかにも俺サマも袋叩きにしようとしやがった。うぜぇんだっつーの」
口調がガラっと変わるワタルさんに俺は心中で冷汗を流す。
ワタルさんが俺サマって言う時は大抵喧嘩モードの鬼畜エスモードなんだよな。
二重人格者なんじゃないかってほど、人が変わるんだよ。
一年もすれば慣れるけど、やっぱ怖いな。
ワタルさんの俺サマモード。
苛立ちを募らせつつ放っていたブレザーのポケットから煙草を取り出したワタルさんは、一本抜き取るとそれを銜える。
ライターで先端を焙り、煙草を吸って小さく吐息。
紫煙を体育館裏に散らすと、「目的が見えねぇな」舌を鳴らす。
ただのイチャモンにしてはやけに粘着質が高かった。
一個人相手に大勢で掛かってくる意味も分からない。
喧嘩スキーの自分でも、一度に相手にできる人数は限られている。
小さく苦言した。
そう、ワタルさんだって超人じゃないんだ。
十人以上で来られたら敗北は目に見えている。ワタルさん自身もそれは知っている。
「目的あって狙われているのかもしれねぇな。何処で喧嘩を買ったか覚えちゃねぇけど」
頭を掻いてワタルさんは率直な意見を漏らす。
「どっちにしろクダラネェことだろうな」
ヨウは発言者に感化されたように苛立ちを見せて鼻を鳴らす。