青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


田山圭太は聞いてしまったぞ。

ハジメがぼっそりと彼女を抱きしめて良いのは自分だけだと零したのを。


妬けるねぇ、お前も。
弥生は心なしか嬉しそうだし。
  

それにしても、ワタルさんが襲われたという今回の事件。
 

ただただドの過ぎるやんちゃ坊主が腕試しだと無鉄砲にワタルさんを襲ったとは思えない。

ワタルさんは荒川チームの一員だし、ヨウの次に名の売れている不良。


ワタルさんがヤラれたら荒川庸一が黙っていないことくらい容易に想像がつく筈なんだけど。

それともすべてを承知の上で喧嘩を売ったんだろうか。

単に考えの足りない不良達なのかもしれないな。


生憎俺は頭を使うタイプじゃない。こういう推測を立てるのは苦手だ。ハジメに任せよう。


と、俺はだんまりと話を聞いているモトの姿を見つける。


「なんか心当たりあるのか?」俺の問い掛けに、「あ。いや」大したことじゃないとモトは肩を竦めた。


ただ不良達が狙われているなら、チームを引っ張っているヨウも危ないんじゃないか、とぎこちなく吐露。

モトらしくない意見だ。
普通ならヨウの腕を過信する発言をするのに。


「ヨウなら大丈夫だって。そりゃあいつは狙われやすい不良ナンバーワンだよ。あいつを伸せば、確実に知名度は挙がるし。でも簡単に負ける奴じゃないって」
 
「そりゃそうだけど。オレ、最近の喧嘩にはあんま好い予感していないんだ。真杉の事件から、特に」


PSPの電源を切ってモトは考え過ぎかなぁっと頭を掻く。俺と同じ懸念を抱いているようだ。

「前の喧嘩も」

真の目的はヨウさんだったんじゃないだろうか、なんとなくそんな気がする。

モトの意味深な発言に俺は眉根を寄せた。


ヨウが目的、か。


あいつイケメン不良だから何かと不遜な輩に狙われやすいんだよな。

健太の事件も、まさか日賀野が目的だったとか。


分からない、考えれば考えるほど。
 

「だとしたら、俺とモトが率先して動かないといけないんじゃないか?」


俺は好敵手に視線を流した。

なにせあいつは俺等の兄貴だからな、相手に口角をつり上げると、当たり前だと鼻を鳴らして舌を出してくる。

俺に言われなくても分かっているらしい。

さすがは弟分兼後継者。
ヨウを超えると言った覚悟は伊達じゃない。


「キヨタは俺のために動いてくれるもんな」


背後から漂ってくる禍々しいオーラに気付いた俺は、千行の汗を流しながら両手を広げてウェルカムポーズ。

にこっと笑うキヨタは勿論だと猪突猛進してきた。

あー…、各々舎兄弟がいると大変だな。ほんっと気を遣う。


……最近の喧嘩に好い予感がしない、か。


 
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