青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


ガクン、チャリが上下に揺れた。

俺は首を傾げてブレーキを掛ける。

なんかタイヤの具合がおかしいような…、道端にチャリを寄せてタイヤを確認する。


うっわ、後ろのタイヤがパンクしてらぁ。
釘でも踏んじまったのか?


やわやわになっているタイヤを手で触り、俺は不幸だと肩を落とす。昨日の夜からついてねぇや。


なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだろ。

素行が悪いせいか?
そりゃヨウ達の付き合いのせいであるからして。


いや結局は俺のせいなんだけど。


「チャリを押して登校なんて」


どんだけ不幸なんだ、俺…、一時限目に間に合う気がしなくなった。本当についていない。


「浮かない顔をしているね。何かお困りかな?」
 
 
タイヤを触っていた俺は顔を上げて、すくりと立ち上がる。

前方を見やるとパーカーを着た青年が片手を挙げてこっちに歩んできた。

私服姿のそのそいつ、俺は見覚えがある。

含み笑いも、赤茶髪も、手に持っている硬貨も見覚えがある。


確か前にキヨタと買い物に行く途中会った…。


「25セント硬貨の人」

俺は相手の顔を見つめる。

「ピンポン」

25セント硬貨の人です、キャツは指に挟んでいた硬貨を俺に見せ付けてくる。


覚えてくれていたんだね、口角を小さくつり上げた。
 

「なんでぼくが此処にいるかって顔をしているけど、ぼくは通信制の高校に通っていてね。定期的にしか学校に行かなくていいんだ。
普段はバイトに勤しんでいるよ。今はそうだね、用事ついでの散歩ってところかな」


通信制の高校。

聞きなれない単語にキョトン顔を作る俺だったけど、「あ゛」こんなことをしている場合じゃないと血相を変えた。

急いで学校に行かないと、前橋に怒られる。

いやもう怒られるフラグは立っているんだけどさ!


「えっとそれじゃ」


話している時間はないんで、俺は会釈してチャリのハンドルに手を掛けた。


「つれないなぁ」


ぼくはわざわざ直接返事しに来たのに、そいつは意味深に台詞を吐き捨てる。



「君がメールしたんじゃないか。『あんたは誰ですか?』って」



な ん だ っ て ?

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