青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
―――…強い日差しが瞼の裏を焼いている。
直射日光が顔に当たっているんだと気付いた俺は、重い瞼を持ち上げた。
まず視界に映ったのは投げ出された俺の右手。
日差しに照らし出されている右手は、力なくに日光浴している。
次に視界に移ったのは灰色の床。
ざらついた冷たい床の正体はコンクリートだと気付く。
瞬きを繰り返し、「此処は」上体を起こそうと体に力を入れる。
途端に走る体の痛み。左腕は何かに引き寄せられているのか、俺の意思では引くことができない。
うめき声を上げて俺は自分の左手に視線を流した。
ギョッと目を削いでしまう。
俺の左手首に金属製の輪がくっついている。
「手錠?」
ドラマで見かける代物に絶句、片輪は俺の左腕を拘束し、片輪は鉄柱を拘束している。
「な、なんだよこれ」
動揺した俺は咄嗟に手錠を開けようと右手で輪を掴み、力の限り引いた。
けど開くわけがない。
だったら根元の鎖を切ってみようと左手を引き、鎖を捻ってみる。
錆びれてるからなんとかなりそう、なん、だけど、駄目だ…、ビクともしない。
引き千切ろうと鎖を揺すっても無効。
ジャラジャラと音が鳴るだけだ。
あ、胸ポケットに生徒手帳があるからそれで…、いや無理だろ。
んじゃ挟んでいるボールペンは…、うん、鍵穴に入らない。どうする。どうすれば!
今しばらく鎖を引き千切ろうしていた俺なんだけど、こめかみに痛みが走り、つい手を止めてしまう。
そこに手を当てるとぬめっとした感触。
右の手を広げると赤い液体が付着していた。
「血…」
なんで血…、目を白黒させていた俺はようやく自分の異変に気付いて息を呑む。
「気が付いたかい? 荒川の舎弟くん。随分寝ていたね」
背筋に悪寒が走る。
ぎこちなく視線を流せば、山積みになっているダンボールに腰掛けて携帯を弄っている里見の姿。
間宮は欠伸を噛み締めながら、ウォークマンを聴いている。
イヤホーンから音漏れしている。けど俺の聴いたことないメロディ、どうやら洋楽らしい。英語ばかりがイヤホーンから零れている。