青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
どうやら俺は倉庫にいるらしい。
壁も天井も床も冷たいコンクリートで囲まれている。
ダンボールや見たことのない機具があちらこちらに見受けられているけど、あんまこの倉庫は使われていないように思えて仕方がない。
メッキはがれている鉄扉が俺の非力さを馬鹿にしているよう。
「あんた等」ギッと相手を睨むけど、せせら笑うだけの里見。間宮は何処吹く風で音楽を聴きっぱなし。
「あ゛っ! それ、俺の携帯!」
里見の持っていた携帯が自分の物だって気付き、俺は返せと声音を張る。
「やーだね」
携帯を畳む里見は、現代人の繋がりなんて脆いものだと突然詩人みたいなことを言い出した。
「君宛のメール」
ぼくが返信しても、誰も気付かないんだからね、細く笑う里見はこれだから携帯は怖い怖いと肩を竦める。
「誰も気付かない。君がこんな目に遭っていても、荒川は勿論、仲間も気付かない。
君の送信ボックスを漁れば、どんな口調でメールをしているのかすぐ分かる。
学校に来ない理由をメールで告げれば、それで終わり。無情な世の中だね」
「……、俺に成りすまそうってか? 目的は?」
「ぼく達の目的? 勿論楽しい不良狩りさ。
ぼくはすこぶる不良を狩るのが好きでね。かの有名な荒川庸一を狩れば、きっと面白いだろうね」
でも簡単に彼を狩れるとは思わないさ。日賀野でさえ難しいと思ったんだし。
楽観的で良くも悪くも真っ直ぐな男だと言われている荒川は、身の危険を感じると本能的に警戒心を募らせる。
荒川だけじゃない。
荒川を取り巻く不良達が眼光を鋭くする。
君もその一人だ。
少なからず君は荒川の舎弟として周囲の事件に耳を傾け、不審に思っていた筈。
山田の事件に首を突っ込んだほどの男だからね。
誰よりも荒川の危機に逸早く勘づく男だとぼくは睨んだ。
そんな舎弟に絶大な信頼を寄せている荒川を狩るには、どーしても君は邪魔なんだ。異色の舎兄弟と謳われた君がね。同時に君は利用できる。
「荒川の弱点。片腕の君なら知っているだろ?」
仲間を失う、ヨウにとって最大の弱点だ。
瞠目する俺は、「まさか」固唾を呑んで、自分の置かれた状況の意味を知る。