青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「俺をフルボッコってか?」
取り敢えず挑発的に物申す。
「いや壊す」
あっけらん顔で答えてくれた。
なーんてこったい、慈悲深い台詞に震えてきたぞ。
まじだぞほんとだぞほんきだぞ。
壊すなんて鬼畜ですね!
俗に言うSMプレイですか?!
残念なことに俺はNなんですがっ、痛いの大キラーイ! だからって痛みを与えたくもなーい! な超ノーマルな子なんですけど!
最近の若者は物騒だから圭太、困っちゃう!
「簡単は壊さないけどね」
俺の携帯を投げてキャッチすると、「仲間が気付いた時には」ぼーん、すべてが手遅れってな具合さ、里見は無慈悲の笑みを貼り付けたまま意気揚々と教えてくれた。
手遅れだと?
ナニをしたいんだよ、お前等は不良を狩ってナニをしたいんだっ。
「舎弟くん。怨むなら、荒川の舎弟になったことを怨むんだね。不良と関わったばかりに、君は酷い目に遭う」
「俺は荒川の舎弟になったことを怨むつもりはない。あいつは俺の大事な相棒だっ…、ヨウを狩る? ふざけるな。他の仲間が黙っちゃいない。あんたはリーダーを狩れない。絶対に」
「面白いね」やってみようか、相手の台詞が俺の鼓膜を打った。
ダンボールから下りた里見の右靴底が腹部を圧迫してくる。
相手の体重に重みを感じながら、俺は鼻を鳴らして断言する。
ヨウは狩れないし、狩られるような馬鹿でもない。
例え舎弟が手中にいてもだ。
俺ひとりであいつを支えていると思うなよ。
俺だけのリーダーじゃないんだぜ、あいつは。
その気丈がいつまで持つか見物だと里見は冷笑し、相棒の間宮を呼ぶと、扉に爪先を向ける。
「ゲームをしようか」
里見は首を捻って視線を投げかけてきた。
「君はぼく等に狩られた。じゃあ荒川達は異変に気付き、君を助け出せるかな。十中八九、気付けないだろうけどね。一週間は気付かない、ぼくは断言しておく」
そうそう狩られた獲物は大人しくしておく、が、基本だぜ?
なあ、荒川の舎弟くん。それに荒川達は気付かないさ、絶対に。
そして気付いた時にはすべて手遅れなんだ、すべて、さ。
くつくつと喉で笑い、里見は間宮と倉庫から出て行く。
入れ替わりに入って来た不良集団に俺は血の気を引いてしまった。
なんだよこの団体様っ、里見の奴、不良狩りが好きなんじゃないのかよ。
なんで不良を倉庫に招いてく、ま…、まさか…、まさかっ、ちょ、フルボッコって経験はあるけどリンチって経験はない。
わけでもないけど、それはナシナシっ、なっ―――…。